第24章 交わらない男達の二日間
向こう岸を睨むように見ていると、昴さんはクスクス笑いながらわたしの肩に手を置いてくる。
「分かってますよ。僕達はのんびりいきましょう」
「・・・分かるの?」
「そうですね・・・大体は。それに二人きりでないと話せない事もありますし」
後半は耳元で囁くように言われて、「それはわたしもです」と、小声で応え頷く。
川辺から少し離れ、二人で売店のような所を目指す。
先程からずっと気に掛かっていた事を聞く。
「大丈夫ですか?安室透と二人で寝るの」
「僕が完全に眠らなければ済む話です・・・元々そのつもりでしたし」
「ほんとに平気・・・?」
「一晩くらい問題ありません。まあ、欲を言えば二人部屋になるのなら、かおりさんとが良かったですが」
「そりゃあわたしだって・・・」
「・・・では今夜は一緒に夜更かししましょうか」
「します!明日は帰るだけですしねー」
わたし達が売店に来た目的は、レンタルのボートを借りる為で。
空気を入れて膨らませた、簡単なタイプのやつ。流れが緩やかなら子どもだけでも乗れるらしい。
それを手に、再び川辺に戻ってきた。
水に浮かべたボートに先に乗せられ、後ろに昴さんが乗り、オールを使って漕いで岸から徐々に離れていく。
なんだかいつもの落ち着く体勢で・・・顔も見えないおかげで今背後にいるのは秀一さんのような気さえしてくる。
けど、今日は“昴さん”を徹底しなければならない。
でも、今なら誰にも分からないか。
背中を預けて後ろにもたれ掛かり、頭を彼の肩に乗せて上を向けば、当然だけど昴さんと目が合う。
「どうしたんですか?外で甘えてくるなんて珍しいですね」
「うーん・・・なんか秀一さんといるみたいな気がして」
「僕は沖矢ですよ」
「今なら誰にも分かりませんよー」
身体を捻って、彼の首元、変声機のある場所に触れる。
すぐにその手は取られ、彼の手が直接その場所を触り・・・
「・・・今俺を赤井にしたら困るのはお前じゃないのか?」
秀一さんの声が耳元からダイレクトに体内に響いた。
ピクリと震えた肩を掴まれ、身体の向きを直される。
「ほら、前を向け」
「は、はい!」
わたしの顔、ニヤけてないだろうか。
一応周りをキョロキョロするが、幸い近くには人はいない。