第3章 本当のあなたは
綺麗とは言えない部屋。
乱雑に置かれている物を適当な場所へ戻していく。
棚のファイルが目に入る。
これには宗介さんの個人的な調査の資料が入ってるんだと思う。
“組織”を追っている途中でトラブルに遭ったのなら、この中に何か手掛かりがあるかもしれない。
ファイルを手に取り、中を見る。
ちなみに宗介さんの追っている組織というのは・・・
国内外問わず活動していて、自分たちの邪魔になる者は構わず殺す。
宗介さんの大事な人を蒸発させたのは、おそらく黒いスーツを着た銀色の長髪の大男で、愛車は黒の古いポルシェ。
有能なプログラマーや科学者を呼び寄せ何やら研究を進めていて。
政財界の大物も多数所属している為、事件を起こしても揉み消せる奴ら。
・・・一体何の組織なのか。
ファイルを閉じようとすると、後ろの方にまだ紙があるのが見えて。
それはなぜか沖矢さんについて書かれたものだった。
沖矢昴 そんな人物は存在しない
工藤優作の知人であるなら、警察関係者もしくはそれに近い者が身分を偽っている姿か?
と書いてある。
・・・どういうことだろう?
沖矢さんは沖矢さんじゃないかもしれないって事か?
でも今はそれより宗介さんの行方が・・・
こんなこと、誰に相談すればいい。
今沖矢さんを頼る気には、なれない。
外はもう暗い。事務所の鍵を閉め、なんとなく一階のエラリーに入った。 家には帰りたくなくて。
カウンターに座り、コーヒーを頼む。
もう閉店間際で店にはママしかおらず、客もわたしだけ。
心配そうな顔のママ。わたしの雰囲気がそうさせているんだと思うと申し訳ない。
「まだ、帰って来ないのねぇ」
「はい。それに、もう一つ心配事が増えちゃって」
「若いのに大変ねぇ」
「宗介さんは、このまま帰って来ないかもしれません」
「えぇっ?」
「そしたら、こちらの二階はどうすればいいでしょうか」
「かおりちゃんが心配することじゃないわ。大丈夫よ」
「すみません」
さすがに沖矢さんのことは話さかなったが、誰かに親身に聞いてもらえるだけで心は少し落ち着く。
「そういうわたしも最近調子が悪くてねぇ」
「どこか具合悪いんですか?」
「歳かしらねぇ」
そんな話をしていたら、入口のベルが鳴り、静かな店内にあの金髪の男性が入ってきた。