第24章 交わらない男達の二日間
フッと笑った秀一さんがわたしの背後に近付いてきて、ふわっと良い香りが辺りに漂う。
「どうしたかおり、顔を赤くして・・・」
「う・・・」
思わず手で頬に触れる。先程まで氷水を触っていた手は、かなりひんやりとしていて冷たい。
後ろから抱きしめられるように腕を回されて、耳の端に口付けられた。
「俺の裸を見て欲情でもしたのか」
「違う・・・っ」
「違うか?耳まで赤くなってきたぞ」
「もー・・・からかわないでください!秀一さん!食べましょう!」
パッと腕を振りほどき彼から離れ、料理を皿に盛り付けていく。
「おい、怒るなって」
「怒ってませんー」
秀一さんに服を着させて、わたしは終始わざと不機嫌な顔をしたまま夕食を取り、後片付けを強引に彼に押し付けて一人お風呂に入る。
別にわたしは本気で怒っている訳では無い。
でも今日は腹の虫が悪いのか、秀一さんのちょっかいに無性に腹が立つのだ。
もっと可愛らしく振舞えば秀一さんは喜ぶんだろうけど、生憎そういう気分にはなれず。
後で謝ろうかと思う・・・でもそれじゃ負けた気がする・・・いや勝ち負けじゃないんだけども・・・
お風呂から上がってリビングへ入ると、ソファに座っていた秀一さんが立ち上がり無言でキッチンへ入っていく。
わたしもそっちに行きたかったのに。
ちょっと癪だけど、その後を追うようにわたしもキッチンへ入る。
(お風呂上がりのビールを取りに行きたいのだ)
秀一さんは冷蔵庫からグラスとビールを取り出した。
ふーん、秀一さんもビールなのか。
それにグラスも冷やしてたなんて!ずるい。
無意識に秀一さんを睨んでしまう。
「・・・飲むだろ?」
「の、みます・・・」
でもどうやらそれは彼のではなく、わたしのビールだったようで。
受け取ろうと思ったら秀一さんはそれらを手にしたままソファに戻る。
つい流れでその横に座り、すっと差し出されたグラスを受け取る。
おお。めちゃくちゃ冷えてる。
そこにビールが注がれて・・・
「あ、ありがとうございます・・・いただきます・・・」
「ああ」
急に優しくされると調子狂うんだけどな・・・
でも、あー・・・うん、やっぱり美味しい。
アルコールのせいもあってか、次第にトゲトゲしていた気持ちが解れていく。