第24章 交わらない男達の二日間
降谷の工藤邸侵入からしばらく経ち。
かおりはあの月夜の一件を知る事も無かったし、彼女の生活に不安を来すような出来事も起こらず。
住む場所が変わっただけで、のんびりと日常生活を送っていた。
新しい部屋にも慣れてきた。しかもなんだかこの狭い空間の方がわたしには合っているような気がしている。居心地が良いのだ。
今日は事務所は休みで、エラリーのシフトも無し。
特にこれといった予定もなく、秀一さんとだらだらと起きて、遅い朝食を食べ、それぞれ家の中でやりたい事をして。
時刻はもうすぐ夕方。
「秀一さーん!ちょっと来てください!」
「ん?ああ、今行く」
家が狭くなったおかげで、家の端と端にいたって少し声を張れば声も届く。
「これ、キャンプの時に着ようと思うんですけど・・・どうですかね・・・?」
クローゼットの前に秀一さんを呼び付けて、買ったはいいが一度も使っていなかった水着を服の上からあてて彼に見せる。
「まあ、似合うと思うが・・・」
「ほんとー!よかった!去年買ったんだけどなんか忙しくなっちゃって着れてなくって・・・」
“そんな事で俺を呼んだのか”とか、
大して見もせず“いいんじゃないか”とか・・・
そんな風に言われる覚悟も少ししてたから、ちょっと嬉しかったりする。
「いや・・・ちょっと着てみろ」
「えっ?なんで!?」
「嫌なのか」
「嫌ではないですけど・・・」
家の中で水着を着る、しかもそれを秀一さんに見せる?
・・・ちょっとそんな気にはなれない。
「当日のお楽しみじゃダメですか?」
「当日見るのは沖矢だ、俺にも見せろ」
「一緒じゃないですか・・・屁理屈言わないでください」
「・・・かおりも偉くなったもんだな」
「そうですかー?・・・あ、夜ご飯どうします?お腹空いてますか?」
水着を着るのを回避し、その場を離れ、スタスタとキッチンまで来た。
秀一さんは、少し機嫌悪そうに後ろをついてくる。
冷蔵庫を開けて中を覗く。あるもので済ませるか、買いに行くか・・・
「うーん・・・秀一さん何か食べたいものあります?」
「俺か?・・・かおりが食いたい」
「ダメです」
「お前は・・・何様のつもりだ」
「・・・かおり様です」