第23章 暗躍する工藤夫妻
赤井は、終始尾行を気にしながら新居へ歩いて戻った。
尾けられた場合取るべき行動パターンは頭の中に明確に描かれていたが、相手はあの降谷。上手く撒けるかどうか・・・
まあ深夜の住宅街で、そもそも人も車も殆どいない状況も幸いしてか、そういう気配を感じる事は全く無かったが。
部屋に入るなり服を脱ぎ、それを元あった場所へ元あったように戻し。
かおりの寝ているベッドへそっと滑り込む。
相変わらず彼女はスースーと愛らしい寝息を立てながら眠っている。
白く柔らかい頬を撫で、その寝顔を眺めている内に、深く眠り込んだ。
降谷は帰り道、赤井を尾けるべきか考えた。
しかし相手は今夜自分が工藤邸に侵入するのを待ち構えていた男だ。
今尾けた所で、上手く尾行を躱す策も持ち合わせているだろう、と断念する。
今回の侵入は工藤新一の調査が主な目的だった訳だが、あわよくば沖矢の正体も同時に探れれば・・・と思ってはいた。
工藤邸に赤井が居たものだから、やはり沖矢は赤井だと確信しかけたのも束の間、沖矢とかおりは引っ越したと言われ、またも正体を暴く事はできず。
おまけに、肝心の工藤新一は“死んだと思われる”と報告して欲しいと頼まれた。
たしかに彼の生存の確証はまだ見つかっていない。(その逆、死亡した確証も無いが)
仮に工藤新一は“生きているかもしれない”と組織に報告した場合、彼の両親や、最悪の場合かおりさんにまで組織の手が及ぶ可能性はある。
“死んだと思われる”と言うのがベストなのか・・・
了承はしたが気持ちはかなり複雑だ。
そう報告した所で、もし彼が生きている事が組織にバレたら、バーボンの組織内での立場はどうなる。
それに工藤新一が生きていると報告を上げれば、彼を殺したはずの男、組織の幹部であるジンの権力の失墜を狙えるチャンスだ。
煮え切らない気持ちを抱えたまま、降谷も就寝する。