第23章 暗躍する工藤夫妻
両者共、構えた銃は逸らさずに続ける。
「何を馬鹿な・・・沖矢昴の正体を見破られた時点で貴様の負けだ」
「今日君がここに侵入することを、全て読んでいたとしたらどうだ?工藤新一を探れと命を受ける事も」
「フン・・・」
「ところで君はこの家の合鍵でも作ったのか?・・・大方葵かおりの荷物でも漁ったんだろうが・・・」
「やはりその口を塞ぐには、トリガーを引くしかなさそうだな・・・」
不敵に笑う降谷は、引き金に掛けた指に力を込める。
そこで玄関の明かりがパッと付く。工藤夫妻のお出ましである。
状況に驚いた降谷は目を見開き、突然現れた男女と赤井を交互に何度も見やる。
「あ、あなたは!?」
「この家の家主の工藤優作です」
「妻の有希子です!」
目を見開き固まったままの降谷に、夫妻はにこやかに笑いかけ、彼を家の中へと迎え入れたのだ。
有希子が紅茶の準備をし、リビングにて、奇妙な面子でテーブルを囲む。
「あの、ところで・・・かおりさんと沖矢昴さんは・・・寝ていらっしゃるんですか?」
「彼らは引っ越したんだ。ここにいて組織に注目されても困るからね」
「そうでしたか・・・」
優作達から降谷へ話したのは、主に次の二点。
工藤新一は生きているが、組織には行方不明で死んだと思われると報告して欲しいという事、
そして組織についての自分達の見解や目論見など・・・
「・・・あなた方の言いたい事は分かりました。僕はあくまでも公安の任務を最優先しますが・・・なるべく意向に沿えるよう努力はします」
降谷は、概ね納得といった表情を浮かべる。
「ああ、そうしてくれ」
「赤井!お前には言われたくない・・・これはお前の為じゃなく、工藤さんやかおりさんの為だ」
「まあ降谷くん・・・」
要らない所でまた赤井に向け火花を散らし始める降谷を優作が落ち着かせて・・・
優作の話はもう少しだけ続く。
かおりと組織をこれ以上近付けないように、それから今夜の事は彼女には内密に、というお願いだ。
こちらに関しては降谷も快諾した。
すっかり冷めてしまった紅茶を飲み干し、降谷は席を立ち、工藤邸を出る。
赤井も席を立ち、カメラの映像で降谷が帰っていったのを確認すると、再びサングラスをかけ出ていった。