第23章 暗躍する工藤夫妻
しかし、探りを入れてくるのが降谷でない場合・・・それも全く有り得ない事では無い。
やはりかおりを逸早くこの家から出すのが最善だろう、と引越しを急ぐことを決め。
加えて彼女にはこの策略は伝えない事も決めた。
伝えれば“わたしもここに残る!”などと言い出しかねないからだ。
有希子には隠しようが無い為話したが、かおりには絶対に漏らさないよう念を押した。
結果大袈裟にかおりの引越しを残念がったり、家を出るのを引き止めたりと少々ややこしい事にはなったが。
昨夜、工藤夫妻と赤井は、何者かの侵入に備えて耐えず監視カメラで家の外を見ていた。空が白んでくるまでずっとだ。
幸い侵入者は現れず、引越しも今日無事に済ます事ができたのだが。
つまり、赤井はほとんど寝ないまま今朝からかおりと買い物に出掛け、先程も彼女を深く寝かしつけたいが為にあれだけの行為をこなしてきたのだ。
この男の体力は本当に計り知れない・・・
そして現在。
三人は今夜こそ来るであろう降谷を、工藤邸にて待ち構えている。
部屋の照明は落とし、小さな明かりだけで彼を待つ。
勿論かおりは、彼らの思惑など露も知らず、新居で疲れきって熟睡している。
赤井が工藤邸へやって来て、家の照明を落として一時間程経った頃・・・
遂に玄関の外を映すカメラが怪しい動きをする人影を捕えた。
背格好からして降谷。影は一人のみ。
おそらく彼はピッキングで解錠し侵入してくるだろうと優作達は踏んでいたのだが、降谷はまるで普通に鍵を開けるかのような動きで容易く門の鍵を開け、敷地内へ入ってきた。合鍵でもつくられたか。
これは予想外だった。赤井は音を立てないよう急いで玄関まで向かい、胸元に入れてきた銃を一度強く握り締め、降谷を待ち構える。
直後、玄関のドアの鍵がゆっくりと回され、薄く開かれたドアの隙間から降谷が音も立てず入ってくる・・・
赤井が銃を取り出し降谷へと銃口を向けた瞬間、気配に気付いた降谷も銃を取り出し音と気配のした方向へと銃を向ける。
薄暗い玄関で、赤井と降谷はお互いに銃を突き付け合い対峙した。
「ぬかったな・・・赤井秀一」
「その言葉、そっくりそちらに返すとしようか・・・バーボン!」