第23章 暗躍する工藤夫妻
その後も数台のベッドに一緒に寝かされ抱き締めるように腕を回され・・・
周りには他のお客さんや店員さんだっているんだ、恥ずかしくて布団があるなら潜り込みたい位だったのに、結局一番最初に寝たベッドを買うことになり。
あの辱めはなんだったのかと、一人眉を寄せて頬を膨らます。
「家だといつもああすると嬉しそうに擦り寄ってくるじゃないですか」
「・・・ここは家じゃないです」
「でもいつもと同じように寝てみるのが一番ですから。そんなに怒らないでください」
「もう・・・」
とりあえず必要になる大きな家具は全て決め、店員の持ってきたお会計の合計金額に驚きつつ・・・
その店員に家具の配送を今日中にして欲しいと言い出す昴さんにまた驚かされる。
「・・・わたし今日じゃなくてもいいですよ?」
「いいえ。早ければ早い方が良いんです。今日中にできますよね?でなければ別のお店に頼もうかと・・・」
昴さんが多少強引に押し通した気もするが、今が平日の午前中という事もあってか、今日中に配送も設置もしてもらえることになり。
次は家電を買いに行くことになるのだが、そこでも一通り必要な物を決めると、なるべく早く送るよう頼む昴さん。
別にそんなに急がなくたっていいのに。
お昼ご飯は外で食べて、残りの細々とした物をまた買い込み、新居に戻ってきた。
昴さんは窓際でカーテンを付けていて。
背が高い分、脚立要らずだ。羨ましい。
わたしはキッチンで買ってきた食器類を一度シンクに出し、洗っていく。
コーヒーカップも、グラスも、箸も茶碗も、二人で選んだもので全てお揃い。
二組ずつ並べて置くと、ほんとにここで秀一さんと暮らすんだな、と実感が湧いてきて、自然と表情筋が緩んでいく。
「かおりさん楽しそうですね、良かったです」
「うん。早く荷物来ないかなぁ・・・」
「急いでよかったでしょう?ではあっちの部屋もコレ、付けてきますね」
「はい!お願いします!」
夕方頃、荷物が続々と運び込まれて設置され、外が暗くなる頃にはすっかり住める状態になり。
でも衣類を始め色んなものがまだまだ工藤邸に置きっ放しなので、一旦すぐに必要な分だけ取りに行く。
「えー、食べて行かないのー?」と有希子さんに強請られ、彼女の作った夜ごはんも頂くことになる。