第23章 暗躍する工藤夫妻
考えに結論を出せないまま、エラリーは閉店となり、車で迎えに来た昴さんと新しい部屋を見に行く。
あんなに楽しみだったのに、今はその気持ちも半減してる。
彼の車に乗り込みシートベルトを締めた直後、無意識に溜め息が漏れてしまった。
「仕事、忙しかったんですか?」
「ああ・・・すみません。なんか疲れたのかもしれません。新一くんの事ばっかり聞かれて・・・降谷零も来ましたよ」
「彼は何と」
「皆と一緒です。新一くんは今何してるのかって」
「それだけですか?」
「はい。有希子さん達も知らないのか?とは聞いてきたけど・・・」
「かおりさん・・・気を付けてくださいね」
「分かってますよー・・・」
すぐに目的のマンションには着き、到着したことを電話で管理会社へ連絡する。
奇麗な見た目のマンションだ。
オートロックは勿論のこと、エントランスには防犯カメラも付いてる。
程なくして管理人が中から出てきて、部屋に案内される。
LDKに、部屋が二つ。ベランダは南向きで、五階の角部屋。
白い壁紙に、明るめの色のフローリング。遮音性も高いらしい。
工藤邸に慣れすぎたんだろう、キッチンもお風呂も狭く感じるけど、本来これでも良い方だ。
しばらく住むには充分。
「良いですよね」
「うん。綺麗だし、これくらいの方がちゃんと全部掃除できるかもー」
「ここを寝室にしましょうか」
「ベッドはどっち向きですかね?」
「コンセントは・・・」
どこに何を置こうか考えていたら、沈んでいた気持ちも、次第にプカプカと浮かんでくる。
わたしって単純な作りだ・・・
すぐに決めて、早速契約する流れに。
わたしの名前で契約するのかと思ってて、書類を受け取ろうとすると、「あなたの名前だと経費で落ちませんから」と小声で耳打ちされ、昴さんが書類に色々書き込んでいく。
そして彼は財布から運転免許証を取り出した。
零もそうみたいだけど、昴さんも持ってるんだ、偽造(?)免許証・・・。ひとり頭の中で呟いた。
諸々のお金を渡すと、「明日以降いつからでも入居してもらっても大丈夫ですよ」と管理人に言われ、昴さんと顔を見合わす。
「早速ですが明日からにしましょうか」
「えっ早!わたし仕事・・・」
「事務所の方なら、たまにはお休みしてもいいのでは?」