第23章 暗躍する工藤夫妻
「・・・そう言えば安室さん。キャンプの場所決まりました?」
「決まりましたが・・・それよりもなぜ沖矢昴さんも一緒なんですか?」
「それはママに聞いてくださいよ・・・誘ったのママなんですから」
「・・・ああ、そういう事ですか」
二人してママに視線を向けると、ママは少し驚いたような顔をして「どうかしたかしら?」とこちらへ近付いてきた。
「なぜココとポアロの慰安旅行に沖矢昴さんが来るんですか」
「男手が多い方がいいじゃない?」
「僕とマスターだけでは頼りないですか?」
「そんな事ないわよぉ・・・でも昴くんに隠れてあなた達がコッソリ二人になるのも、ドキドキして面白くない?」
「あのねママ・・・わたし達で楽しまないでくださいよ」
「大丈夫!二人になる時間は上手く作ってあげるから」
「お願いしますよ?ただでさえ僕達、なかなか一緒に居られないんですから」
「あら。じゃあ私はお邪魔かしらねぇ・・・」
「いや、僕もそんなにゆっくりはしていられないので」
ママは元いた場所へ戻り、安室透は残ったコーヒーを飲み干すと、小銭をピッタリ置いて帰っていった。
再びママと二人きりになった店内に、なぜかホッとして。
安室透の使ったグラスとコーヒーカップを洗いながらママに話し掛ける。
「ねえママ・・・?」
「どうしたの?さっきまであんなにニコニコしてたのに」
「あ、そうですよね・・・あはは。わたし昴さんと引っ越そうと思ってて。それで今日この後・・・」
本当は違うことを話そうと思ってた。
安室さんとはこれからなるべく距離を置きたいと思ってる。
だって昴さんに申し訳無さすぎるから。
でも、本当は離れたくなくて。
どうしたらいいか分からない。
すぐにお客さんがやって来て、結局どちらの話もできなかったのだが。
秀一さんがアメリカに行ってた時だって、慰安旅行の話が出た時だって、零と二人になれることを心の奥底で期待はしていた。
勿論、秀一さんの事は大好きだ。
だから、零とは距離を置こうと考える訳で。
“都合のいい関係”なら、都合が悪くなったら離れればいいだけなのに。