第23章 暗躍する工藤夫妻
出来上がったコーヒーにミルクを入れて、差し出す。
「どうぞー・・・探し物見つかりました?」
「ええ。僕としたことがウッカリしていました・・・」
彼がコーヒーカップをゆっくりと口に運んで、またゆっくりと一口飲み、息を吐く。
「さすがかおりさん・・・バッチリです」
「ミルク入れただけなんですけどね」
「でも僕が自分でするよりも美味しいんです」
ママはわたし達のやり取りを、少し離れた所から見ていて。にこやかな顔をしている。
わたしと安室透の、恋人には内緒のひとときだと思われてるんだろうか。
実際はそんなに甘いものでは無い。
わたしは目の前で笑顔を浮かべるこの男が、新一くんの事をどう探ってくるだろうかとさっきから気を張り続けているし、きっと彼だって似たようなものだと思う。
「・・・かおりさん」
「はい?」
安室さんがカウンターに身を乗り出して、小声で何かを話そうとしている。
わたしも少しそちらへ頭を近付ける。
「ひとつ、聞いてもいいですか?」
「はい。じゃあひとつだけね」
「工藤新一くんは現在どうされているんですか?」
「みんなそればっかりですね・・・わたしもよく知らないんです」
「藤峰有希子さん達も息子さんの行方を知らないんですか?」
「ひとつって言ったじゃないですかー・・・まあ、有希子さん達も分かってないみたいですよ」
「・・・本当にそうなのか?」
安室透らしからぬ顔つきの彼に、じっと顔を見つめられ、内心息が詰まりそうになる。
努めて顔色も態度も何も変えずに“本当です”と、彼の顔を見つめ返す。
ほぼ同時に視線を外し、各々のコーヒーカップを手にして、一口飲み、それぞれカップを戻す。
ママから見たら息の合うカップルに見えるだろうか。
「そうですか。工藤新一くん・・・ご無事だといいですね」
「はい・・・」
やっぱり零は新一くんの事に探りを入れたいんだろう。
これ以上この話は続けたくなくて、別の時間の持ちそうな話題を振る。