第23章 暗躍する工藤夫妻
翌日のこと。
工藤邸にて四人揃って朝食をとり、わたしはエラリーに出勤する。
店に着くなりママに工藤新一の事を聞かれ、「大変だったわねぇ・・・」と同情され。
結局、「新一くんのことはわたしもよく知らないんです」と、またひとつ嘘をつくことになった。
それにしても・・・工藤夫妻のことは勿論好きだけど、同居するとなると今まで秀一さんと二人きりだった時とは全く違う訳で。
何かしら気を使うことも多く変に疲れる。
秀一さんと新しい部屋に引っ越すことばかりを考えながら業務に勤しんだ。
一緒に家具を選んだり、食器を揃えたり・・・きっと楽しいに決まってる。
秀一さんとは買い物に行ってもあまり楽しくなさそうだけど、一緒に行くのは当然、昴さんだから。
昼過ぎにママの作ったパスタを食べながら休んでいると、スマホにメッセージが届いた。
送信元は昴さん。
お仕事お疲れ様です。
新しい部屋ですが、今日の夕方見せてもらえるそうなので、一度一緒に見に行きましょう。
仕事が終わる頃に迎えに行きます。
・・・嬉しくて仕方ない。自然と口元が緩む。
休憩を終えて表に戻ると「何かいい事でもあったの?」とママに言われる始末だ。
ランチさえ終われば後はのんびりと時間が流れていく店内で、お客もいないのにひとりニコニコしながらカウンターの中で自分用のコーヒーを淹れる。
そこで思いもよらない人物が入口から入ってきた。零だ。
「安室さんこんにちは!どうしたんですか?」
「こんにちは。実はバックヤードに忘れ物をしたかもしれなくて・・・探しに来ました」
そう言って安室透は奥へスタスタと入っていく。
彼が忘れ物だなんて珍しい。まあそんな事もたまにはあるのか。
コーヒーを啜っていると、一分も立たないうちに彼は表へ戻ってきて、わたしの目の前の席に座った。
「せっかくなんで、コーヒーも飲んでいきます」
「はい。いつものでいいですよね?」
「はい。お願いします」
彼はミルクを結構入れて飲むのが好きで。
好みの量はもう身体が覚えている。