第23章 暗躍する工藤夫妻
かおり達が一旦組織の事は頭の隅の隅に置き、料理と会話を楽しんでいた頃。
安室透ことバーボンこと、降谷零の元に一通のメールが届く。
工藤新一の情報を要求する
Time is money!
急げよ バーボン
組織のラムからである。
正直・・・あまり気乗りしない指令だ。
工藤新一と言えば、かつては新聞やニュースでよく目にした高校生探偵。
でも工藤新一は組織が殺したと・・・聞いた記憶がある。
今日の昼、その名を久しぶりに聞いて、僕もひっかかっていた所だった。
かおりさんと沖矢昴が住む家の家主、工藤優作の息子で、かおりさんの親戚でもある少年・・・
まさか、と一瞬頭を過ぎったのは・・・沖矢昴の正体が工藤新一なのでは、ということ。
しかし少し調べてみればそれは違うだろうという結論に行き着く。
ネットには彼の画像やプロフィールのようなものも上がっており、それを見る限りは、たとえベルモット程の変装術があっても、この彼が沖矢に化けるのには骨格や身長からして無理があると思う。
では、もし彼が生きているとしたら、どこに潜んでいるのか。
赤井を追い詰めようと、工藤邸に無理に押し入った時の事を思い返す。
あの家には外にも中にも、いくら有名人の家とはいえ、多すぎる程の監視カメラが付けられていた。
あの時は、結果があんな事になってしまったのもあり・・・こちらの出方を伺う為にFBIが余計に付けた物なんだと思っていたが。
もしかするとあのカメラは、あの家に身を潜めている工藤新一を守る為だったのかもしれない。
何にせよ、工藤新一の生死の痕跡を調べるには、もう一度工藤邸にお邪魔する必要がありそうだ。
堂々と訪ねた所で、あの家にはかおりさんだけでなく沖矢もいる、家中調べるのには無理がある。
あの家が留守の時は・・・滅多にない。
普段は沖矢が四六時中家にいる。
急ぐとなると危険だが夜中に忍び込むしかないのか・・・
玄関の鍵はピッキングには時間がかかりそうなタイプだったことを、無意識に記憶している。
今度は、先日かおりさんを工藤邸まで送った際の事を、記憶を手繰り寄せ思い起こす。
工藤邸の鍵は二つ。門扉の鍵と玄関の扉の鍵。
どちらも、彼女が鞄から取り出したキーケースに付いていたはず・・・