第23章 暗躍する工藤夫妻
外が暗くなり始めた頃。
わたしと秀一さん、工藤夫妻の四人で、和食料理屋にやって来た。
あんな騒動の後で外食なんて大丈夫なのかと思ったが、工藤家御用達らしいこのお店は、他の客とは完全に隔たれた空間で食事や御手洗もでき、他人に姿を見られることは無いそうで。
(それでも秀一さんは昴さんの格好だけれども)
「新ちゃんも誘ったんだけどねー?今日は蘭ちゃんの手料理が食べたい気分らしいのよ。せっかく両親が帰ってきたっていうのにねっ」
「まあ、コナンくん風邪で寝込んでた設定だったみたいですし・・・家で寝てなさいって言われてるのかも」
「こっちは色々聞きたい事もあるのにー・・・ねえかおりちゃん聞いてくれる?」
「わたしで良ければ・・・」
有希子さんは、“新一くんを京都で見た”という人物に会ったときに面白い話も聞けたそうで。
それを興奮気味に話し出す。
「蘭ちゃんって分かるかなー?新ちゃんの幼なじみの」
「はい!わたしも仲良くさせてもらってます」
「それなら話は早いわねっ、多分蘭ちゃんの事だと思うんだけど。新ちゃんを見たって人がねー・・・女の子が新ちゃんにキスしてる所を見たんだってー!しかも清水の舞台の上でよ!」
「うそー・・・!蘭ちゃん大胆!わたし実は蘭ちゃんにも新一くんにも相談されてたことがあって、」
「あら、何をー?」
「新一くん、少し前にロンドンで蘭ちゃんに告白してたんですって。で、」
「何それー!聞かせて聞かせて!」
その時以来ちゃんと告白の返事をしていなかった蘭ちゃんがようやく返事をした、もしくは新一くんが返答を迫ったか。
いずれにせよ、思い合っていた二人がようやくうまくいったんだろう、と有希子さんに説明する。
「新ちゃんも大人になってるって事よねー・・・嬉しいけど、ちょっと寂しいわぁ・・・」
「蘭ちゃんなら本当にいい子だし、心配ないですよ」
「そうねー・・・まあ、かおりちゃんだって昔はちっちゃくて天使みたいだったものねー」
「それ一体いつの話ですか・・・」
「あの、かおりさんの子供の頃って、どんな子だったんですか?」
急に会話に入ってきた昴さんが有希子さんに問い、有希子さんがわたしの幼少期の事を話し出す。
自分の事ながら、自分も覚えていないことを話されるのって、結構恥ずかしかったりする・・・