第23章 暗躍する工藤夫妻
そのままわたしはどうも寝てしまっていたようで。
起きた時にはリビングのソファに一人だった。
そんなに時間は経っていないかと思いきや、時計を見ればもう午後六時で。
随分長いお昼寝をしてしまった。
廊下に出ると、キッチンの方から音がするので向かってみる。
漏れ聞こえる声の感じからして、既に有希子さんと優作さんが帰ってきているようだ。
中に入ると昴さんと夫妻がテーブルを三人で囲んでいて。
口々に「おはよう!」と迎えられて、気恥ずかしくなる。
「すみません!気付いたら寝ちゃってて・・・おかえりなさい!・・・あの、よく、家に入ってこれましたね」
そこで何故か三人にニコニコ笑われる。
わたしが昼寝してたのがそんなに面白かったのか?
「かおり、もう記者連中はおらんぞ。優作さんと有希子さんが一芝居打ってくれたお陰でな」
「えっ!そうなんですか!よかったー・・・」
工藤夫妻は今回の騒動の元である“新一くんを見た”と最初に発信した人物に直接会ってきたそうで。
“アレは私の願望が作り出した幻覚だったような気がします”とツイートさせ直したそう。
それが拡散され、騒動は落ち着いたらしい。
「その人・・・よくそんな事頼まれてくれましたね」
「いやその人物が有難いことに我々の大ファンだったんだよ。それを逆手に取って、我々のサインで丸め込んだと言う訳だ」
「へー・・・なるほど・・・」
「しかし君たちの言う“組織”の奴らはこれを信用するとは限らない」
「やっぱり、そうですかね」
「今まで以上に周りには警戒して、尾行や盗聴には更に気を付けるように」
ホッとしたのもつかの間。
分かってはいた事だけど、また気が重くなる。
「それから・・・新一とコナンくんに関する事だが。かおりちゃんも、赤井くんから聞いているね?」
「はい」
「小さな姿の彼には今まで通り、“江戸川コナン”として接してほしい。まだ新一には君達が知っている事は伏せておこうと思う」
「分かりました」
「君達が気付いていることを、向こうも察しているかもしれないが、彼が自分から話すまでは知らないフリをしてくれると助かる」
まあ、そうだよな、と頭の中で納得する。