第23章 暗躍する工藤夫妻
昴さんは報道陣を適当にあしらい、通話終了のボタンを押し、盛大な溜め息をついた。
「昴さん・・・お疲れ様でした」
「ええ・・・こういうものは次は無視してもいいんでしょうか」
「うん、出なくていいんじゃないですか?・・・優作さん、マスコミはなんとかするって言ってたんですよね?なんとかなる・・・のかなこれ」
「彼がそう言ったんです、なるでしょう。今は飛行機の中でしょうか」
「ですね。でもこれじゃ家から出れませんねー・・・エラリーのシフト入ってなくてほんと良かった・・・」
「全て想定内です」
昨日の帰りにあんなに食料を買い込んだのは、今日外に出なくても大丈夫にするためだったんだな、と今更気付く。
粛々と家の中の掃除を始め、時々鳴るチャイムにうんざりしながらも昼過ぎにはやりたい事を終わらせた。
今日だって天気はいい、布団を外に干せないのが唯一残念。
その頃にはテレビのワイドショーがついに新一くんの話題に触れ始め、あろう事かここ工藤邸の前から中継が行われたり、彼の通う学校である帝丹高校の玄関にもカメラが行っていた。
ここまで報道されたら確実に組織の人間の目にも触れるだろう。
不安と変な緊張で落ち着かない。
リビングで、ソファに座っている昴さんの向かいにわたしも座る。
彼の頭の中はどうなっているのかは見えないけど、表情は全く何も気にしてないような、普段と変わらない顔で。
彼にとってこういう事態は、大した事じゃないのか?それともこれも“想定内”だからか。
タブレットを操作する姿をしばらく見つめていたら、ふと目が合った。
「浮かない顔ですね・・・心配ですか?」
「・・・はい」
昴さんが喉元の変声機をいじる。
つまり彼の口からは元の声が出るいう事だ。
「大丈夫だ、俺も優作さんだっているんだ、絶対かおりに危害は加えさせない」
「・・・秀一さんに言われると安心するかも」
「だろうな、顔が変わった。ここに来るといい」
彼がソファの空いている所をトン、と手で叩く。
テーブルの周りを半周して、彼の隣に浅く腰掛ける。
頭を数回撫でられて、肩に手が置かれ、彼の方に引き寄せられる。
自然と彼に寄りかかるような形になり。
特別何か話す訳でもないけれど、すぐ隣に秀一さんがいるのが何とも心地良くて。彼の肩の辺りに頭を預けた。