第22章 シルバーブレッド達のご帰宅
一緒に画面を眺めていると、すごく好みの感じの部屋の写真が目に入った。
詳細を見れば条件も良い上に、工藤邸も探偵事務所も徒歩圏内。
(零の家の方向でないことも密かに確認した)
ただひとつ・・・やっぱり東京は思った以上に家賃が高い。
「あの・・・秀一さん?家賃は折半ですか・・・?」
「心配しなくていい、馬鹿げた値段で無い限り経費で落とせる。ホテル住まいでも出る位だ」
「ほんと!さすがFBI!」
それは有難い。ぜひ、あやからせて頂こう。
明日は無理だろうけど、時間ができ次第、気に入った所を見に行こう、と決めて。
二杯目のビールに口を付ける。そこで秀一さんのタブにメールが届いたようで。
工藤夫妻が明日の夕方、日本に戻ってくるとの知らせだった。
新一くんがネットで騒がれているのは既に知っているようで、迷惑を掛けていたら申し訳ない、報道陣はこちらでなんとかする、とのことだった。
つまり・・・工藤邸で秀一さんと二人っきりで過ごすのは、今夜が最後になるのかもしれない。
なんとなく、部屋の中を見回す。
数ヶ月住む内に自分達の持ち物も増え、すっかり自分の家のように思っていた・・・
すると前触れもなく、隣りにいた秀一さんが立ち上がった。
「そろそろまた表の様子を見てみないか・・・」
「あ、はい!」
時刻は午後十一時過ぎだ。
そろりそろりと窓際に近付く。
秀一さんは少し後ろから、わたしに“早くしろ”といった感じで窓の方を顎で指す。
少し身を屈めてカーテンの隙間から玄関の方を伺う。
しかし、人影が見えない。夜中は収穫が無いと踏んで帰ったのか?
「あれ・・・誰も・・・見えませんね」
「そうか」
カーテンを戻すと、すぐ真後ろにふわりと秀一さんの気配を感じて、頭頂部に彼の顎が乗っかってきた。
そのまま腕が回ってきて、そっと抱き締められる。
「どうしたんですか急に」
「コソコソ動くかおりが可愛くてな・・・」
「・・・なんか馬鹿にしてません?」
「可愛いと言っているだけだ」
腕が解かれたと思ったら身体を抱き上げられ、暗い中を数歩移動し、ベッドに下ろされて、身体が少し弾む。
秀一さんもベッド横の明かりを付けて、すぐ隣に寝そべってくる。