第21章 ひとりぼっちの夜
遊園地やテーマパークはマスターとママの年齢を考えて却下するとして・・・
行き先の案は色々出てくるが、中々決定打には至らず・・・
最後の安室さんの提案でほぼ決まりかけることになる。
「キャンプはどうですか?テントではなくてコテージに皆で泊まって。バーベキューとか・・・川遊びも花火もできますしね」
最近そういう施設は流行ってるらしく、綺麗な所も多くて、広いお風呂にトイレ、ふかふかのベッドまで、ホテル並みのものがちゃんと備わってるそうだ。
わたし達が準備やらをすれば、ママとマスターにはゆっくりしててもらえそうだし。
何よりもそれを聞いた梓さんが物凄く楽しそうにしてるのが一番の決め手となった。
ネットで良さそうな所をピックアップしている内に、ポアロの閉店時間も迫ってきて、今日は帰ることに。
鍵を閉めて三人で外に出る。
「お疲れ様でしたー!かおりさん、またね!」と梓さんは手を振って、くるっと背中を向けて妙な急ぎ足で去っていく。
なんか・・・要らない気を使わせてしまってるかもしれない。
なるべくなら、彼と二人にはなりたくなかったのに。こんな日の夜は特に。
わたしもさっさと帰ろうと、「じゃあ!お疲れさまー」と言い、後ろを向きかけた瞬間、彼に腕を掴まれた。
「待てよ・・・帰るのか?」
斜め後ろから、突き刺さるような声が飛んできた。
その声の主の方は向かずに、中途半端な方向を向いたまま答える。
「帰るよ」
「明日早いのか?」
「明日は普通かな」
「昴さん、いないんだろ?」
「いないけど帰る」
「・・・送る」
「いいよ、近いし」
こんな状況なのに、彼の安室透の仮面が外れかけている気がして心配になってくる。
さっきから口調も態度も、これじゃまるで零だ。
外だからやめた方が良いと思うんだけど。
「かおりさん。せめてこっち向いて」
生憎そっちは向きたくない。顔を合わせたら、帰る決心が揺らぎそうで。
でも見ていなくても、視界の端で彼がこちらに一歩近付いたのが分かってしまう。
そしてあろう事か身体に腕を回されて、抱き締められそうになり、驚いて身体ごと彼の方を向いた。
辺りには歩いている人もいる。車だって通ってる。