第21章 ひとりぼっちの夜
ぼーっと空を眺めながらチビチビお酒を飲んでいると、メッセージアプリの通知音が静かな部屋に響いた。
こんな夜中に誰だろう。
スマホを手に取り、アプリを開くと・・・秀一さんからだった。
送信元は勿論“沖矢昴”だけど、その名前を見た途端、無性に気分が高揚してくる。
“そろそろ寝る頃ですか?一人で寂しくないですか?こちらは順調です。おやすみなさい”
やっぱり寂しがってると思われてるな・・・
たしかに、寂しかったけど。
すぐに返事を打ち込む。
“今メッセージもらったから寂しくないです!おやすみなさい!良い報告待ってます!”
しばらくスマホを見ながらニヤニヤしていたけど・・・
ある事が気になり始める。
・・・飛行機に乗ってる時ってネット使えないんじゃなかったか?
まさか沖矢昴になりすました誰かがメッセージを送ってきたんじゃないかと、冷や汗が流れる。
今回沖矢昴が渡米している事を知っているのは、本人とわたし、秀一さんのボス、工藤夫妻、阿笠さん(と多分哀ちゃん)だけ、この中の誰かが漏らすとは考えにくい。
送信元もいつもの秀一さんのアカウントだし、乗っ取られたとも考えにくい。
結局、少し調べたら、最近は機内でもWiFiが使えるようになってきていると分かり・・・一安心したけれども。
まだまだ世の中知らない事って沢山あるのかもしれない・・・
勝手に一人で興奮して、冷めて、あれだけモヤモヤしてた心もなんだかスっとした。
その後は当然のように秀一さんのベッドに入り、目を閉じた。
翌朝。
今日はエラリーの方に出勤。
ランチのバタバタを終えて、バックヤードで休憩していると、テレビから不穏なニュースの報道が聞こえてきた。
京都で作家や俳優が殺される事件が起こり、街に天狗が溢れているやらなんやら・・・
事件が彼を呼ぶのか、彼が事件を呼びよせてしまうのか・・・何故かいつも事件に遭遇する、京都に修学旅行中のはずの新一くんは巻き込まれていないだろうか。
それに真純ちゃんや蘭ちゃん達も心配だ。
蘭ちゃんにメールを出し、大丈夫かって心配と、彼が修学旅行に来てるのかも聞いて。
秀一さんにも“ニュース見た?”とだけメッセージを送っておく。
今ならまだ秀一さんも工藤夫妻も起きている時間だろう。
きっとネットで調べてくれるはずだ。