第21章 ひとりぼっちの夜
昨日、秀一さんから哀ちゃんのお姉さんの話を聞いたときは・・・哀ちゃんの本当の姿にも驚いたけど、一番は、とにかくすごく苦しかった。
できればお姉さんの話は知らずにいたかったと思う。
愛していた人が亡くなったってことは、秀一さんとその人は、嫌いになって別れた訳ではないってことだ・・・
秀一さんの心からその人が消えることは一生無いだろうし、ずーっと好きなまま、大切なまま、記憶に残り続けるんだろうから。
秀一さんの手前、あまり気にしてないように振舞いはしたけれども、ジョディさんとの事を知った時とは比べ物にならない。数十倍キツい。
勿論、秀一さんは意地悪でこんな話をしたんじゃないのは重々分かっている。
でもわざわざ家を空ける直前に話さなくてもいいのに!
一人でいるとどうしてもそのことを考えてしまう。
今日のお昼も事務所でボーっと秀一さんのことを思っていたら、零がやってきて。
コナンくん達のくだらない話で気が紛れた。
零によると、コナンくんは先日、哀ちゃんの無くし物を取りに海へ入って、ズブ濡れになったそうだ。
それで濡れたままあちこち探し回ってたみたいだから、彼が“風邪気味”というのはあながち嘘じゃないのかもしれない。
でもまさか零の帰る所を秀一さんに見られているとは思いもしなかったけど。
そもそも成田に向かう前に秀一さんが事務所に寄ってくれた事にも驚いた。
秀一さんっぽくない。
昨日の話をわたしが気にしてるのを、隠してるつもりでもやっぱりバレてて、気を使ってくれてるんだろうか。
自分はこんなに弱い人間だったかなー・・・と、ふと思う。
秀一さんが作っておいてくれてた夕食を食べ終えて、明日の朝食の用意もお風呂も済ませ。
いつもなら秀一さんと二人でゆっくり過ごしている時間に一人なのが、とてつもなく寂しく感じる。
秀一さんの部屋に来て、秀一さんがよく飲んでいるバーボンを、秀一さんがいつも使っているグラスに注いで、ひとりで晩酌を始めた。
秀一さんは・・・まだ飛行機の中だな。
見えるはずは無いけど、カーテンを開けて空を見上げる。
(今日は秀一さんがいないから、カーテンを開けても全く問題無い)
割と綺麗な星空が広がっていて。
そういえば一年に一度しか会えないカップルもいるんだった、とベタな話を思い出す。
夏の星に纏わる伝説の事だ。