第21章 ひとりぼっちの夜
一応アラームを設定して昼寝をしたものの、起きる予定の時刻よりも三十分以上早く目が覚めた。
かおりの様子でも見て、顔を見せてやってから成田へ向かおうか・・・
昨日は聞きたくない話を聞かせてしまったことだし、アイツのことだ、色々ウジウジ一人で考えていそうだから・・・
俺らしくない思考が働く。
こんな風に考えるようになったのは、沖矢として振る舞うようになったからか。
それともかおりと一緒になって、彼女に影響されたせいか。
女の機嫌を自ら取りにいくなんて、昔の俺が知ったら、きっと笑うだろう。
身体を起こして家を出た。
岡田探偵事務所までは歩いて十分程。
そろそろ建物がハッキリ見えてくる頃。
偶然にも二階の事務所の窓を開け、顔を出しているかおりを確認できた。
彼女は窓から下を見下ろしていて、どうやら笑顔だ・・・が、その視線の先には手に皿を持った金髪の男、どう見ても降谷くんだと思われる人物が立っていた。
男の顔は見えないが、上を見上げしばらくその場に静止しており。
ほどなくして一階の喫茶店へ入っていった。
かおりも窓を閉めて、事務所の中へ引っ込んだ。
かおりが今も降谷くんと仲良くしているのは、何らおかしいことではない。
喫茶店のバイト仲間として以前と変わらず親しくしているだけだろう、そうだろう。
しかし、モヤモヤとした得体の知れないモノが俺の思考の邪魔をする・・・それは嫉妬なのか、疑念なのか。
なるべく考えないようにはしていたが、かおりに対して、頭の中にひとつ、引っかかっていることもある。
俺の思い過ごしだといいんだが。
とにかく事務所を訪ねてみる。
入口をノックすると中からかおりの声。
ドアを開けると、彼女は洗い物の途中だったのか流し台の側で手を拭いていた。
「昴さん!どうしたんですかー!もしかして」
「立つ前にかおりさんに会っていこうと思いまして」
俺の顔を見てパッとかおりの表情が明るくなったのも束の間、すぐにそれは真剣な表情に変わり、人差し指を口元に立てた彼女は盗聴器の確認をし出した。
やはり、先程まで降谷くんがここにいたんだろう。
流し台の横には、つい今しがた洗い終えたであろうコーヒーカップが二つ置かれている。