第21章 ひとりぼっちの夜
かおりに、俺と灰原哀、その姉との関係を話した。
話せばこうなることは大方予想していたが・・・
かおりの目には涙が溜まっている。
時折呼吸を乱しながら、なんとか堪えているように見える。
「お前はあまり深く考えんでいいと言ったろう・・・泣かなくていい」
「わたしだって、泣きたくないですー・・・」
「あの少女は・・・表には出さんが、きっと寂しい思いをしている。複雑かもしれんが、お前も気にかけてやってほしい」
「はい・・・」
肩を抱き寄せてやると、かおりがすがりついてくる。
「・・・あまり聞きたくない話だっだだろう」
「いいんです・・・でも・・・今でもその女の人のこと、思い出したりする?」
「・・・全く思い出さないと言えば嘘になる」
「ですよね・・・」
「今はかおりが一番大切なのは、分かっているな?」
「うん・・・」
小さな肩が震えている。
しばらく頭と背中を撫でてやると、呼吸も落ち着いて変な力も抜けてきた。
「秀一さん・・・?」
「どうした」
沖矢の時に使うような、なるべく優しい口調で答えてやる。
「ずっと、一緒にいてね・・・」
「ああ・・・」
当たり前だ。俺の方こそお願いしたい位だ。
かおりの身体を強く抱いて、苦しいから離せと言われるまで強く抱き続けた。
翌朝。
俺は今日の夕方飛行機に乗りロスへ行くことが決まった。出勤するかおりを見送ったら暫しお別れだ。
玄関先で家を出るのを惜しむかおりはまた可愛らしく。
たった三日足らずのことが、そんなに寂しいのか。
まあ、昨夜あんな話をしたせいなのかもしれんが。
「そんなに離れたくないなら、今日くらい事務所をお休みして夕方まで一緒にいますか?」
ちなみに、沖矢に変装を済ませ、しかも玄関口だから俺はこんな口調になっている。
「えーそれは・・・ダメですよ、ちゃんと仕事は行かなきゃ」
「では、いってらっしゃい」
もう何度目か忘れた、再びキスをして、可愛い恋人を見送り、リビングに戻る。
今日は適当に家の掃除をして、時差もある事だし昼寝をしてから家を出るつもりだ。