第21章 ひとりぼっちの夜
見事に焼きあがったお肉を昴さんが切り分けてくれて、それを食べつつ阿笠さんと喋っていると、話題はいつの間にか哀ちゃんのことになり。
「哀ちゃんも来ればよかったのにね。お肉美味しーい」
「哀くんはツンデレさんじゃからの・・・いい子なんじゃが・・・でも彼女が来ておったらせっかくの旨い肉もちょっとしか食べられん所じゃった」
次から次へとお肉が阿笠さんの口に吸い込まれるように入っていく・・・
「哀ちゃんて、阿笠さんの食事管理までしてるんですか?」
「そうじゃ・・・有難いんじゃが好きな物が食べれんのは辛くてのぉ・・・実はたまにコッソリ食べておる」
阿笠さんがウインクをして笑う。
「なんか奥さんみたーい・・・でもコレなら赤身だし沢山食べても怒られないんじゃないですか?・・・あ、」
哀ちゃんが門の向こうからこちらを覗いているのが見えた。
立ち上がりそちらまで歩き、門を開ける。
哀ちゃんは一歩後ずさり、身を竦めてわたしを見上げて来る。
そんなに警戒しなくたっていいのに。
「哀ちゃん、どしたの?」
「・・・ハカセが食べ過ぎてないか確認しにきたのよ」
ほんとに確認しにきただけなのか。
羨ましそうにこちらを見ていたように思えたのは気のせいか。
「ふーん?哀ちゃんも食べていきなよ。お腹空いてないの?」
「私は、いいわよっ・・・っ!ちょっと!」
彼女の腕を引いて、敷地の中へ入れる。
門を閉めて、彼女の背中を押して阿笠さんの隣りへ連れていき、都合のいい事を言う。
「哀ちゃんもやっぱり混ざりたいってー!」
「違うわよ!かおりさんが無理矢理・・・」
「そうか哀くん!昴さんの焼いてくれたお肉、とっても美味しいぞ!」
「・・・ハカセがどうしてもって言うなら・・・食べてあげてもいいけど」
わたしがさっきまで座っていた椅子を勧めると、そこにちょこんと座る彼女。
お肉の乗ったお皿を渡すと、そっぽを向いたまま「ありがと」と言われ。
それが一瞬照れてるように見えて・・・なかなか可愛い。
「ねえ哀ちゃん、美味しい?」
「・・・悪くないわね」
「でしょー?昴さんお肉焼くのもすごく上手いの!」
しかしその後の哀ちゃんは二コリともしなくて。
食べてくれてるだけまあ、良いのか・・・
このクールな彼女をどうしたら攻略できるだろうか。