第21章 ひとりぼっちの夜
「しかしワシだけ呼ばれるのも悪いのぅ・・・コナン君も誘ってみるか」
「ダメよ!彼は・・・今、風邪ひいてるみたいだから」
哀ちゃんが大きな声で阿笠さんを制す。
こんな風に声を荒げる彼女を見るのは初めてだ。
「おお!そ、そうじゃったの・・・忘れとったわい」
焦った様子の阿笠さんもなんだかおかしい。
買い出しに行ってくるから、様子見てぼちぼち遊びに来てくださいと言い残し、一旦わたしと昴さんは帰宅する。
工藤邸に入り、盗聴器を確認して、一息つく。
「眼鏡のボウヤは風邪なのか?」
「風邪ひいたって言って小学校休んで、高校の修学旅行に行くつもりですかね?」
「その可能性がありそうだな」
「てことは、阿笠さんは知ってるって事?」
「ああ、おそらく小さな彼女の方もな」
「嘘!?でも・・・そうなのかも・・・」
「・・・今日は何も知らぬフリをして接しろ。明日優作さんに確かめてくる」
でも、阿笠さんがコナンくんの秘密を知っているのは解るとしても、哀ちゃんがなぜそんな重大な事を知ってるんだろうか。
たしかに、賢そうで、コナンくん並に大人びた子だけど。
まあ、秀一さんの報告を待とうと思う。
物置からコンロを出して、買い出しも済ませた。
(肉屋へ行った時、わたしの焼きたい肉と、彼の焼きたい肉の種類が違いすぎてびっくりした)
まだ夕方にもならない時間。
天気は相変わらず良くて、風も心地良い。バーベキューにはピッタリだ。
なんせ外だから、昴さんの変装を解いてもらえないのだけが少し残念だけど・・・二人して早々とビールの栓を開けて、お肉を焼き始めた。
しばらくして、匂いに気付いたか。阿笠さんが隣からやってきた。
「すまんのぉ・・・二人の邪魔じゃないかの」
「アメリカではバーベキューは大勢でするのが当たり前でしたから。二人きりでは寂しい位ですよ」
「なんかアメリカのバーベキューって、日本のとはお肉まで違うみたいで。わたしも驚きました・・・あれ見てくださいよ!」
「おお!すごいのぉ!」
昴さんがビールを片手にコンロに乗った大きな塊肉を転がしている。
これをじっくり焼いて、切り分けて食べるのがアメリカ流らしい。
わたしは所謂“焼肉”を外でするのがバーベキューだと思ってたから。
こういうのは、初めてだ。