第21章 ひとりぼっちの夜
程なくして待ち合わせの場所だと言う所に着き、足を止めた。
どちらからともなく、自然と繋いでいた手を離して、昴さんはタブレットを取り出して、わたしもなんとなくスマホを確認する。
何を言ってるのかは聞き取れなかったが、斜め上で昴さんの声がして顔を上げると、白髪の欧米人の男性がわたし達の前に立っていて。
昴さんと何やら英語で話し始める。
つまり、この人が“ボス”なんだろう。
おそらく渡米できるよう手を回してくれと頼んでいるんだろうけど、なんせ英語はサッパリなのでしばらくポカーンと二人のやりとりを眺めていた。
暫くすると、昴さんが日本語で紹介をしてくれた。
この彼がボスであり、名前はジェイムズ・ブラックというそうで。
・・・なんかいろんな有名人の名前が混ざったような名前。
優しそうでにこやかで、FBIだという雰囲気はあまり感じない。
勿論、ジェームズ・ボ〇ドでもイーサン・ハ〇トでもない。
「キャメル君からも聞いているよ。彼がお嬢さんと言ってしまったのも納得だね」
ジェイムズさんがわたしを見て穏やかに笑う。
「日本人は幼く見えるそうですね」
「かおりさんは特別そう見えるかもしれませんね」
昴さんがそう言う。
自分を童顔だと思ったことは無かったんだけど。
昴さんまでそう思ってたのか。軽くショックを覚えそうな勢いだ。
「もうその話はいいです・・・それで、行けるんですか?ロサンゼルス」
「明日の夜までには準備を整えておくよ」
「じゃあ明日行っちゃうのかー・・・」
「すぐ帰ってきますから、大丈夫です」
昴さんの顔をつまらなさそうに見つめていると、彼に頭を撫でられる。
人前なのに恥ずかしい。
「仲が良さそうでなによりだね・・・まあ、もしもこの彼が不在のときに緊急の要件があったら、私に連絡をくれ。すぐに対処する」
ジェイムズさんの連絡先をスマホに登録させられる。
使うことが無いのが一番だけど、と言いながら。
最後は、道を尋ねてきた外国人と、道を教えた日本人のフリをして、ジェイムズさんと別れた。