第21章 ひとりぼっちの夜
「あの、新一くんとか真純ちゃんの高校も明日から修学旅行ですよ」
「・・・そうか。もし彼もこちらにいないとなると」
「そうなんですよね・・・何も無いとは思いますけど」
「そうだな・・・阿笠さんの所には一応知らせておこうか」
食事を終え、秀一さんは眺めていたタブレットを置いて言う。
「ボスと会ってくる」
「FBIの?」
「ああ。かおりも来い。いずれは紹介しようと思っていた」
「今日?」
「なんだ」
「いい天気だし、布団とシーツを・・・」
今日はシーツやらを洗って布団と一緒に外に干そうと思ってたんだけど・・・秀一さんがいつも“ボス”と呼んでいる人物にも、すっごく会ってみたい。
「・・・洗濯か?日本に帰ってきたら俺がしてやる。布団は今日みたいな天気の日に外に出せばいいんだろ?」
彼の顔を見上げたまま、二度頷く。
「出掛ける。準備しろ」
「・・・はい!」
今回は甘えさせてもらおう。
(いつも甘えさせてもらってばかりな気もするけど)
秀一さんのボスってどんな人なんだろう。
FBIとかCIAとかMI6とか・・・某有名映画の俳優の顔が思い浮かぶけど・・・
急いで支度をして、完全に昴さんになった彼と家を出た。
待ち合わせ場所は浅草らしい。
彼らが単純にそこへ行ってみたかったのと、観光スポットの方が外国人が目立たないって理由で場所を決めたらしいけど・・・
実はわたしも行ってみたかった。
もうすぐ完成する、東京の新名所になること間違いなしの、ベルツリータワーを近くで見てみたいのだ。
浅草に着くと、予想通りのすごい人で・・・半分以上は外国人か。
「かおりさん」
昴さんが左手をこちらに差し出してくる。
その手を握って、待ち合わせの場所まで並んで歩く。
行く手の前方には、もうほぼ出来上がってるように見える高い塔。ベルツリータワーだ。
テレビで見るよりはるかに大きく感じる。
「やっぱ大きーい!」
「635m、高いですね・・・」
「ビルだったら何階建てだろ」
「・・・あの展望フロアで100階位でしょう」
「へー・・・さすが昴さん」
「僕は距離や高度を把握する能力には長けていますから」
それは秀一さんだろ、と心の中で呟く。