第21章 ひとりぼっちの夜
また数日後のよく晴れた休日の朝のこと。
いつもより少しゆっくり起きて朝食の用意をしていると、秀一さん(昴さんに変装済)が誰かと電話してる声が聞こえた。
彼が電話中も“沖矢昴”を貫いているのはいつものことだけど、“研究のことですか”とか、“大学にかけあってみます”とかいうフレーズがチラチラ聞こえてくるので気が気ではない。
つまり“例の組織のことで”なにか“FBIにかけあってみる”事があるということだろうから。
加えて少し深刻そうな声色と顔付きに心配になる。
こちらは食事の用意ができた。
電話を切った彼は、何も聞かずとも話し出した。
「優作さんに呼ばれた。ロスに行ってくる」
「ろす、ロサンゼルス!?・・・東京、離れるの?」
「ボスの了解が得られればな。かおりと一緒でもよかったんだが・・・お前パスポート無いんだろ?」
「無い・・・ていうか秀一さんこそ、出国できるの?」
「ボスがなんとか手配してくれるだろう」
「じゃあわたしの分もなんとかなったり・・・」
「・・・それはならん」
ピシャリと冷たく言い放たれ、普通に断られるより数倍残念な気持ちになる。
「ですよね・・・えー・・・いつ行くんですか?」
「早ければ早速明日から、用が済めばすぐ帰ってくる」
「そっかー・・・わたしもパスポート申請してこよ・・・」
「そうしておけ・・・前にも言わなかったか?」
「言われました・・・一緒に行きたかったなぁ」
「かおり・・・分かっていると思うが、俺は遊びに行く訳では無いんだぞ」
「分かってますー・・・でも何の為に行くんですか?」
組織のことで優作さんと話したいことがあり。でも優作さんはすぐにはロスを離れられない状況らしく。
こちらが伺おうかと提案すると有希子さんが是非に!と言い出して聞かなくなってしまったそうで・・・
眼鏡のボウヤと工藤新一の件を尋ねる良い機会でもある、って。
そういえば明日からその新一くん達の高校も修学旅行だ。
彼が果たして修学旅行に参加するのかは知らないけど、行くのだとしたら・・・秀一さんも新一くんも東京にいないということになるのか・・・なんだか少し嫌な予感がする。