第20章 恋は盲目
数日後。
ママと二人でエラリーの営業をしていた午後のこと。
キャッキャと楽しそうな高い声が外から聞こえてきて。
その声の主達が店に入ってきた。
蘭ちゃんと園子ちゃんと真純ちゃんだ。
頼まれたジュースを席に運ぶと、何やら三人は観光雑誌を広げていて。
旅行か・・・行き先は京都のようだ。
「かおりさんは行ったことありますー?京都って」
「あるよー?行くの?」
「はい!修学旅行で!」
「いいねー!私も高校生に戻りたいよ・・・」
「なあオススメの場所ってあるかー?」
ちょうど店も暇だったのでそのまま女子高生三人組の会話に参加する。
「新一くんもさすがに修学旅行は来るよねー?」と彼女達は言う。
・・・絶対行けないだろ、と心の中で切なくツッコミを入れていたんだけど。
でもなんと蘭ちゃんはたまに新一くんと会っているそうで。
新一くんとは電話やメールでやり取りしてるだけだと思ってたから驚きだ。
告白も直接言われたそうで、しかも場所はロンドンだと。
コナンくんは、新一くんの身体に戻ったりもできるということなのか?
わたしだけでなく、それには真純ちゃんも驚いている様子だった。
「沖田くんに会えるかなー・・・」
蘭ちゃんがそう呟いた。
・・・もしかしてコナンくんが危惧していた奴のことか。
「誰ー?沖田くんって」
「新一くんにソックリな男の子が京都にいるらしいんですよ」
「そうなんです!この前剣道の大会を見に行ったら偶然知り合って・・・ほんと新一ソックリで・・・」
「へえ・・・それで、気になってるの?」
「ち!違います!沖田くんの大事な忘れ物を預かってて。できれば会って渡したいなって・・・」
「なーんだ。蘭ちゃんが好きなのはやっぱり新一くんだよね」
「えっと・・・まあ・・・」
「じゃあ修学旅行で会えたら、ちゃんと気持ち伝えなよ?」
「は、はい・・・」
微笑ましいけど、もどかしい。
十代の恋愛って、自分もこんな感じだったのか?
・・・昔を顧みる。
じゃあ今はどうだ?
わたしと秀一さんは好きだとかどうこう以前に、出会ったその日にセックスしてしまったし。
零となんてそもそも情報を探る目的で仲良くなり、身体を重ねたのだ。
わたしは狂ってしまったな。
こんな話、今の蘭ちゃん達には絶対に言えない。