第19章 伝えたいことがある
唇が触れるだけのキスを、どれくらい繰り返したか。
突然、窓の外が光って直後に大きな低い音が静かな部屋に長く響いた。
そんなに怖がりな性分でもないけど、ビクッと身体が反応して、零の手を思わず握りしめる。
近くに雷が落ちたみたいだ。
「なに、雷が怖いのか?」
「怖くない!ビックリしただけだって・・・」
「ふーん・・・ちょっと可愛かったのに」
零が意地悪そうに笑ったから。
からかわれたことは気に触るけど、良かった。
いつもの零で安心した。
「零だって今のはビックリしたでしょ?」
「ハッとはしたけど。かおりさん程じゃないって」
「だってすごい近かった」
「ははっ・・・ここ建物の中だぞ?まず落ちることはないしな・・・っ」
でもなんかすごい面白そうに笑われて・・・
バカにされてるみたいで・・・だんだんムカついてくる。
「・・・もう寝る・・・おやすみ!」
クルっと踵を返して布団に潜り込み横になった。
・・・決して眠たい訳じゃない。
「・・・かおりさん?なあ・・・怒ってるのか?」
さっきまでのふざけた感じじゃなく、いくらか落ち着いた声が後ろから聞こえた。
けど、わざと何も応えない。
零が部屋の明かりを落として、すぐ後ろに入ってきた。
「悪かったって・・・可愛いからからかいたくなるんだって・・・おやすみのキスくらいさせて」
「・・・さっきいっぱいしたじゃん」
「足りない」
肩を引かれ後ろに倒され、つられて仰向けになる。
目の前に横向きの零の顔が現れる。
九十度向きを変えても、憎いくらい整っているように見える顔面が、近付いて来る。
柔らかい感触が唇にあたって。
ゆっくりと離れては、また触れて。
・・・悔しいけどそれはやっぱり心地良い。
どんどん身体から力が抜けていく。
「機嫌・・・直ったか?」
優しく頭を撫でてくる手が、頬に下りてきて添えられる。
いつの間にかすっかり気も緩んでいて・・・微笑んでいる零の顔を、只ぼーっと見つめる。
「可愛い・・・でもまだ寝かせない」
再び唇が塞がれて、すぐに舌が割って入ってこようとする。
既に力の抜けきっていたそこは、すんなり侵入を許し。
柔らかく口内を撫でられて、あっという間に脳内が蕩けていく。