第19章 伝えたいことがある
「僕がかおりさんに組織のことを話さないのは・・・」
落ち着いたトーンで零が話し始める。
「僕が、組織の壊滅を公安の手柄にしようとしてるからだ・・・と思ってるか?」
「そう、だね」
「それも無くはないんだけど・・・一番は、かおりさんを危険な目に合わせたくないからなんだ・・・分かるだろ?」
「・・・言ってることは分かるよ」
「かおりさんが知れば知る程・・・かおりさんの身が危うくなるだけだ。だからもう必要なこと以外何も話したくないし、これ以上深入りしないでほしい」
「もう殺されてもおかしくない位知ってるよ・・・一緒じゃない?」
「ダメだ・・・絶対そんなことはさせない」
零が腕を回してきて、強く抱き締められる。
その腕が少し、震えてる?
ああ・・・そうか。
彼は大切な人を今まで何人も組織や犯罪の所為で失ってきてるんだ。
これ以上身近な人間を失いたくないのは、分かるけど・・・
「どうしたのー・・・何かあっても零が守ってくれるんでしょ?」
「勿論そうだ・・・でも、もう、頼むから、何も聞かないでくれ」
震える声でそう頼まれたら、嫌だとは言いにくい。
了承した方がいいんだろうか。
「・・・わかった」
零がわたしのことを大切に思ってくれているのは有難いけど・・・
こうなると、わたしにできることって、何も無くなってしまったのかもしれない。
「かおりさんが一番大事だから・・・」
「零・・・」
胸が苦しい、痛い。なんだろうこれは。
ずっと、零に対してこういう風に考えちゃダメだと思ってたけど・・・
彼の為に何かしてあげたい、
辛いとき傍にいてあげたい、
もしわたしがいなくなったら、零はどうなる・・・
こう思うことがよくあるのは間違いなく真実で。
でも、だってあれだ。
わたし達は、零の言ってた“都合のいい関係”でいるのがちょうどいいんだから。
こんな複雑な感情は必要ないはずで。
そうじゃなかったらいろんなものが崩れてしまう。
頭の中がごちゃごちゃして・・・リセットボタンが在れば一度押したいんたけど。
なんとか自力で思考を整理する。
「わたしが思ってることを言ってもいい?」
「ああ」