第19章 伝えたいことがある
「葵さんは・・・東京からお越しになったんですよね」
「そうです」
「これは私の弟のものだと思うんですが、お知り合いなんですか?」
「いいえ・・・?弟さんのものだったんですか・・・?」
「ええ、おそらく。良ければ・・・少しお話をさせていただきたい」
ずっと立ったままだったのだが、取調室の椅子に座らされ。
机を挟んだ向かいに彼が座る。
まるで尋問でもされそうな気がして、更に嫌な雰囲気倍増だ。
諸伏警部から、弟さんの話を聞かされる。
幼い頃に両親が亡くなり、それからは別々に暮らしていて。大人になり弟も警察官になったはいいがすぐに辞めたと連絡があり、それ以来連絡は取れていなかったそう。
「どこで何をしているやら心配していたんですが・・・これで納得できました・・・弟は公安に配属され、どこかに潜入中に命を落としたのでしょう・・・」
「え?・・・そういうこと、になるんですか・・・」
今初めて聞きましたという態度を徹底する。
諸伏警部にじっと目を見られ、背中を汗が流れる。
「ええ。でも、葵さんは、景光のことは知らなくても、“ゼロ”という男性のことはご存知なのでは?」
「ゼロ・・・?分からないです」
「この荷物の差出人ですよ」
「・・・わたしにはちょっと」
“ゼロ”って・・・零の子供の頃のあだ名だってコナンくんが言ってたな。
それで安室透の正体が降谷零だと分かったんだから・・・
「まあ・・・大方私に何か聞かれても話すなと言われているんでしょう?今日はわざわざ遠くまでありがとうございました」
諸伏警部が席を立つ。
つられてわたしも立ち上がる。
「・・・いえ、こちらこそお忙しい中ありがとうございました・・・あの・・・」
「はい」
「先程一緒にいらっしゃった隻眼の男性も県警の方なんですか?」
「そうですが何か?」
「いえ、あまりに強面だったものでちょっと気になって」
「ああ、彼は外見も素行も悪いですが・・・優秀な警部ですよ」
「へえ・・・そうですか。すみません変なことお聞きして・・・」
取調室を出て、玄関まで見送られる。
黒田という男のことも本当は聞きたかったが・・・
今回は辞めておこうと思う。
諸伏警部は色々鋭すぎる・・・
県警の建物を出て、零の待つ場所へ戻る。