第19章 伝えたいことがある
長野へ向かう当日の早朝。
かおりさんを迎えに僕は米花駅前まで車で来ていた。
沖矢昴には、新幹線で行くと彼女は伝えているらしいので、念の為駅で待ち合わせという訳だ。
車から降りて、彼女がやって来るであろう方向を目で探す。
彼女はすぐに見つかった。
綺麗な色のブラウスに、ふわっとしたスカートの裾を揺らしながら歩いているのが遠くに見えた。
“デートに見える服装で来て”と頼んだのは僕だ。
頼んだとき、彼女は少々渋っていたが・・・
(沖矢に怪しまれるのを危惧したんだろう)
でもちゃんと女性らしい格好で来てくれたようだ。
・・・やっぱり可愛い。
かおりさんが近付いて来たところで手を高く上げると、すぐにコチラに気付いたようで、大きく手を振り返してきた。
少し小走りで駆け寄ってくる彼女が、本当に可愛くて仕方ない。
ニヤついてしまいそうな顔を引き締める。
普段なら表情のコントロールなんて、意識せずとも容易にできるのに。
助手席のドアを開けてかおりさんを車に乗せた。
車を走らせすぐに高速に乗り、長野を目指す。
今回彼女に頼みたい事というのは、
かおりさんにあの事を話した日から、薄らと彼女になら頼めるかもしれないと思い始めていた事で・・・