第2章 立待月
事務所に戻り、仕事を再開する。
紙の山はなくなり、宗介さんに感心される・・・
「さすが葵。お前はすごい!」
「宗介さんとわたしの得意分野が違うだけです」
「もう今日は上がっていいぞ!」
「はーい!」
ふとスマホを見ると沖矢さんからメッセージがきていた。
“今日は僕が夕食作りますね、何時頃帰られますか?”
思わず顔がニヤけそうになる。
“17時には帰れると思います。ごはん楽しみです!”
返信して、帰り支度を始める。
「なあ今日、飲みにでも行くか?」
「うわー行きたい・・・けど今朝沖矢さんと約束したんですよ。お隣さんに挨拶行くのと、今夜は彼が晩ごはん作ってくれるみたいで」
「へえ・・・なら週末はどうだ?」
「ぜんっぜん空いてます!久しぶりに行きましょう!」
「よし!じゃあお疲れ!」
「はい!では失礼します!」
事務所を後にしまた徒歩で工藤邸を目指す。
でも沖矢さんって料理出来るんだな・・・わたしより上手だったら女としての立場が・・・
なんて考え事しながらだと十五分の道程はあっという間に終わる。
「帰りましたーっ!」
「おかえりなさい!キッチンにいますよ!」
この広すぎる家のせいで大声での挨拶になる。
キッチンに行くと鍋を見つめている沖矢さん。辺りには醤油と砂糖の匂いが漂っていて。
鍋を覗き込むと・・・肉じゃが?
「美味しそーう!」
「もうすぐ食べれますが、お腹空いてますか?先にお風呂にします?・・・それとも僕にしますか?」
後ろから腕を回され耳元で言われる。
「・・・困らせないでください」
「困った顔が見たいんです」
「もう・・・お隣に挨拶行くんですよね」
「そうでしたね、行きましょうか」
隣家の阿笠邸を訪ねると、白衣姿のいろんな意味で丸々とした男性に出迎えられた。彼はその道では有名な科学者で、発明家らしい。
ここには、小学生の哀という女の子と一緒に住んでいるそうだ。
家に戻り沖矢さんの作ってくれた夕食を美味しく頂く。
彼は箸の使い方も綺麗で。昼間オムライスとカレーをかきこんでた宗介さんとは真逆過ぎて笑えてきた。
「何か可笑しいですか?」
「沖矢さんが綺麗に食べるからです!宗介さんって字も汚ければ食べ方も汚くって・・・」
「へえ・・・」