第2章 立待月
お昼は一階の喫茶店エラリーで食べることに。
このビルの大家さんであり、三階の住人でもある喫茶店のママに紹介される。
「今日からウチで仕事する、後輩の葵かおりです」
「よろしくお願いします」
「あなたが!そう!よろしくねぇ」
ママは、おそらく六十代くらい、でも年齢の割にかなり綺麗な女性で。明るくて、優しそうな方だ。
わたしはパスタとサラダを、宗介さんは「いつもの」と頼んで、出てきたのはカレーライスとオムライスだった。
「米ばっかじゃないですか・・・」
「探偵は体力仕事だ!食え!」
「はいはい、いただきます・・・あ、美味しい」
「だろ?」
お世辞じゃなく、なかなか美味しい。もくもくとパスタをフォークで巻き取っては口に運ぶ。
「葵は相変わらず美味そうに食うよな」
「ですかね?昨日沖矢さんにも言われました」
「どうだった、一晩一緒にいてみて」
「どうって・・・」
昨夜のことを思い出し顔に熱が集まり出す・・・
「・・・これは早速食われたな」
「いやー・・・めちゃくちゃ良かったです」
「もっと自分を大事にしろ!葵はなー・・・」
下世話な話で盛り上がっていると、入口から人が入ってくるのが見えたので、一応声のトーンを落とす。
入ってきたのは、金髪の若い男性で、ママに何かを手渡すと、すぐに出て行く。
パッと目を引く容姿の人で。思わず外を目で追うと、その男性は白いスポーツカー?に乗り、去っていく。
「どうした葵、あいつ知ってるのか?」
「いや・・・知らない・・・けど」
「あいつは、ここの系列店のバイトだ。しかも本業は探偵」
「同業者!?」
「かおりちゃんも、気になる?安室くん。だってイケメンだもんねぇ」
ママが隣に立ち、話し掛けてきた。
「安室さんって方なんですか?芸能人でも来たのかと思った・・・」
「そうよねぇ。ポアロって、ウチの旦那の店なんだけどそこで働いてて。そこでももう大人気なのよ」
「俺はあんなチャラチャラした見た目の男は好かんね」
「わたしも金髪って好みではないですけど・・・イケメンでしたねー」