第18章 秘密が多い私達
零の車に乗り込み、車が発進する。
「今日はどこ行くの?」
「ウチでもいいか?と言うより、ウチに来てくれ」
「うん、いいけど」
零の家に行くのはこれで三度目か。
彼の運転で連れていかれるのは初めてだ。
一度目は風見さんにアイマスクをされたまま知らない内に来ていて、二度目はタクシーだったっけ。
車でしばらく走るとあっという間にどこだか分からない場所になり。
そしてまたしばらくすると窓の外が見覚えのある景色になった。
零のマンションだと思う所の前を通り過ぎたので、あれ?と思ったが、すぐ近くの屋内駐車場に車は入っていって。
そうだ、駐車場は別に借りてるんだったと思い出す。
「・・・聞いてもいい?ここって、どの辺なの?」
「米花町だけど?」
「ここも?米花町って広いんだね」
「あ、いや、ここには遠回りして来てるだけで実はそんなに離れてないんだ。エラリーまで歩いても十分くらいかな」
「近所じゃん・・・!」
「かおりさんの家とは逆方向だから、少し離れてるけどな」
用心に越したことはないけど・・・ちょっと凄すぎないか。
だってエラリーからここまで、車で十分は走ったと思う。
車を下りて歩く。自然と触れた手を繋いで、マンションの中に入り、エレベーターの中でふわりと抱きしめられた。
・・・零からいい匂いがする。食欲をくすぐるような。
沢山の鍵を開けて部屋に入ると、いい匂いの元が分かる。
「もしかして夜ごはん作ってくれてた?」
「そう。だから家に来てほしかったんだ。後は仕上げだけだから」
「ありがとー!」
靴を脱ぎ、パタパタとキッチンへ行くと土鍋がひとつコンロに置かれていて、今日は何かしらの鍋料理なんだろうと思われる。
「かおりさんは座って待ってて。ビール、持ってけばいいから」
「手伝うよー」
「もう何もすること無いって。ほら、あっち行ってて」
テーブルの上には取り皿やら箸まで、バッチリ準備がされていて。
本当に何もすることが無くて、一人座って待つ。
ビールを半分程飲んだところで、零が鍋を食卓に持ってきた。
「簡単なものだけど・・・こういうのって一人で食べても味気ないだろ?まだ寒いうちに一緒に食べたかったんだ」
「うわー!美味しそーう!」