第18章 秘密が多い私達
風見さんと、どうでもいい話をコーヒーが無くなるまで繰り広げ、二人でエラリーを出た。
最後まで零は風見さんのことをただの客として扱っているようにしか見えなかったし、ママもこれには気付かないだろう。
事務所に戻って一人窓の外を眺めた。
風見さんが向かいの通りのコンビニに入り、雑誌コーナーで立ち読みしている姿が見えて。
程なくして零がエラリーを飛び出してきて、走って同じコンビニへ入っていく。零って、足、速いな。
男物のハンカチを手に持ってたから、客の忘れ物を届けるとか言って店を出てきたんだろう。
これ以上見てても何も得られるものはなさそうだ。
窓に背を向けて、机に向かった。
今朝のメールでの依頼が、結局は零からのデートの誘いだったってことは、秀一さんには伏せておくつもりだ。
勿論、出掛ける最中も零から情報を聞き出せないか終始気を張るつもりだが、それだけじゃない。
別の思いもあるからだ。
またひとつ、言えないことが増える。
わたしだって秘密だらけだ。
(秀一さんや零、コナンくんの秘密に比べると種類はかなり違うけど)
その秘密を全て話せる相手がいればいいのに。
宗介さんになら話せたかもしれないけど・・・ふと、この事務所の主の顔を思い浮かべる。
零の言う通り、別の場所で元気にしててくれればいいんだけど。
出掛けたときに宗介さんの件の進展がないかも聞いてみよう。
受け取り主は零だと分かっているが、依頼のあったメールアドレスにメッセージを送る。
もちろん内容は調査の日取りや手段についてだ。
何回か探偵と依頼主としてのやり取りが続き、最後に“明日の夜、事務所に伺います。良ければ夕食もご一緒にいかがです?”と送られてきた。
了承して、やり取りを終えた。