第16章 胸に秘めた
楽しみにしていた連休当日。
さすがに移動中は赤井秀一の姿ではいられないので、行き帰りは沖矢昴の格好だけど、今日と明日とずっと二人でいられると思うと・・・
こんなにワクワクするのはいつぶりだろう。
車に乗って昴さんの運転で目的地を目指し、途中でフレンチのランチを食べて。
(ちなみにわたしはお酒も頂いた)
宿に着いて、チェックインにはまだ少し早いので車と荷物を宿に預けて温泉街を散策する。
足湯に浸かってのんびりして、早々とママに渡すお土産を探しながら、美味しそうな匂いにつられて買い食いしたり・・・楽しい。
ちなみに、別にわたしは昴さんと過ごすのが嫌な訳では無い。
昴さんは、優しい上にわたしのやりたいことにもちゃんと付き合ってくれるし(フリをしてるだけかもしれないけど)
一緒に出歩くのはすごく楽しいのだ。
秀一さんと目的も無くブラブラその辺を歩くなんて・・・絶対楽しくなさそうだし。
それでも結局は、その秀一さんに早く会いたくなってきてしまうんだけど・・・
これからゆっくり部屋で過ごすためのお酒と食べものもたっぷり買い込んで宿に戻った。
部屋に案内されて、仲居さんが部屋を出ていくとようやく彼が変装を解く。
いれてもらったお茶を飲んで一息つき、とりあえず部屋の中を見て回ると。
窓から見えるのは一面の青い海。
これなら外から誰かに秀一さんの姿を見られることは、まずないだろう。
お風呂場の浴槽には常に温泉が流されているようで、いつでも入り放題。
大きな窓からは海と空だけが見える。
次の間にはベッドが二つ並んでいて。
横になってみる・・・寝心地は良さそう。
手足を伸ばして、寝返りも打ってみる。
うーん・・・最高だ。
「まさか寝る気じゃないだろうな」
「まさかぁ・・・」
「風呂入るか?」
「はい!」
いつものように後ろから秀一さんに抱えられながら浴槽に浸かる。
柔らかいお湯に、いい景色。
ゆっくり流れていく雲と、波が次から次へと寄せてくる様を、ただお湯に浸かってぼーっと眺めてるだけなのに、すごく贅沢をしてる気になってくる。
「こういうのもたまには良いもんだな」
「来て良かったです・・・なんか今すごい幸せかも・・・」