第16章 胸に秘めた
翌日、エラリーに出勤してママに連休の打診をすると、快く承諾してもらえた。
「彼と旅行でも行くの?」
「ええまあ・・・でも」
「でも?安室くんには内緒にしてって?」
「えっ?はい、そうしてもらえると助かります・・・」
零に知られると、いろんな意味で厄介なことになりそうなので、ここは勝手に解釈してもらえて有難かった。
「安室くんは嫉妬深いの?」
「・・・そうですね」
ママは相変わらずわたしと彼氏と安室透との三角関係を脳内で楽しんでいるようで。
一々否定するのも面倒なので、もうそういうことにしておいた。
これは零に言っておかなければならないだろうか。
明日は彼がエラリーに入るはずだから。
でも連休が決まったおかげで朝から気分はめちゃくちゃ良い。
仕事も捗り、無駄に笑顔で接客していたかもしれない。
ウキウキし過ぎてたのか、零に連絡を取ることなんてすっかり忘れたまま次の日になり。
事務所で仕事を始めて、ママ達が店を開けている気配に気付いてハッとした。
もう、時すでに遅しか。
仕方がないと諦めて、仕事を再開する。
少し前に毛利探偵事務所がネットで依頼受付を始めたと聞き、ウチもそういうのがあってもいいんじゃないかと思い。
今日は事務所のホームページにメールでの問い合わせ先を追加してみた。
それが終わるとつい秀一さんとの旅行先を検索しては見てしまう。
大まかな行き先は昨日決まったので、今日は宿探しだ。
どれだけ海と温泉と料理の写真を眺めていたんだろう。
久しぶりに、階下から美味しそうな匂いが上ってきたことで昼時なんだと気付く。
もう少し後、ランチのピークが過ぎた頃にわたしも食べに行こう。
いくつか気になる宿をクリップして、自分のスマホにデータを送る。
帰ったら秀一さんに見せる為だ。(どうせ真剣に見てはくれなさそうだけど)
そこで来客があった。
でも来たのは仕事の依頼者ではなく、オムライスとサンドイッチを手にした零だった。
「こんにちはかおりさん」
「こんにちは・・・」
「お昼まだですよね?よかったら一緒に食べません?」
「はい!ちょうど後で食べに行こうと思ってたんです!しかも安室さんのオムライス・・・食べたかった・・・」
パソコンを閉じてお茶を用意して。
テーブルを挟み向かい合って座る。