第16章 胸に秘めた
真純ちゃんも帰り、席を片付けてママの隣に戻ると、「あの子高校生でしょ?随分深刻そうな話してたみたいねぇ」と言われ。
「同業者なんです。ああ見えてあの子も探偵なんですよー」と誤魔化したけど、納得してもらえただろうか。
わたしと零の間柄を見抜いたのだ。
ママはいい人だけど、もう迂闊に何でも話してはいけないと思ってる。
今日は嘘を吐くというか・・・心にある事と違う事を言ってばかりだ。
仕事を終え家に帰り、秀一さんに今日の真純ちゃんとのことを伝えた。
「真純は、沖矢を俺だと思っているのか」
「血の繋がりを感じるんですかね」
大きなため息を吐いて。
しばらく無言のまま、重たい空気が流れる。
「そうだ、エラリーのママがわたしの彼氏を見てみたいって。今度ほんとに遊びにきてくださいよ」
「お前の彼氏っていうのは、沖矢か?」
「秀一さんですよ!けどみんなの手前、昴さんってことになってますから・・・最近考えながら喋ってばっかで頭が疲れますよ・・・」
「・・・すまんな」
「あっごめんなさい!そういうつもりじゃなくて」
「いい。たまには泊まりで息抜きにでも行くか?」
「行きたい!けど行くのは昴さんとでしょ・・・」
「いや、俺とだ。あるだろ、人に会わず、一歩も外に出んでも楽しめるような所」
「・・・ラブホとか?」
「そう来たか・・・俺は温泉がいいと思っていたんだが」
「あー!そっちの方がいいです!」
「まあ、かおりが一日中俺に抱かれたいと言うのなら、そういうホテルもアリだな」
「だめ!温泉がいいです!お部屋に温泉付いてるとこね!」
何かあったらすぐ車で戻れるくらいの範囲で、という制約はあるものの、秀一さんと旅行に行けるなんて思ってもみなかった。
考えただけでも顔がニヤけてしまいそう。
「お前は・・・相変わらず分かりやすいな」
「すみません・・・でもすごく楽しみです!これで明日からまたしばらく頑張れますー!」
「宿はお前に任せるから、休みが取れたら取っておけ」
「一緒に決めましょうよ・・・」
「俺はかおりと二人でゆっくりできれば構わん」
「なんか温度差感じます・・・海か山かだけでも・・・」
「海だな。部屋の外を全て視認できる部屋がいい」
「・・・窓開けても覗かれる心配なさそうですもんね」