第15章 雪の中の
数日後。
先日の雪の大パニックは嘘のよう、普段通りに戻った都内。
エラリーのママの退院祝いと、わたしの歓迎会を兼ねた食事会で、レストランコロンボに来ていた。
米花町内にある、ミートソースパスタが有名なお店だそうで。
参加者は全員。と言ってもママ・マスター夫妻と、梓さん、安室透、わたしの五人だ。
出てきた料理を取り分けようとすると、「今日はかおりさんの歓迎会でもあるんですから、座って楽しんでください」と安室さんが皆の分を取り分けて。
誰かの飲み物が少なくなれば彼が自然と次の飲み物を気にして頼んでくれたり。
そして彼は気の利く話で場を盛り上げることも忘れない・・・
安室透はやっぱり完璧だ。
ちなみにママは明日から仕事に復帰するそう。
つまり、安室透とわたしの二人がエラリーで仕事をすることは、もうない訳で。
少し、寂しい気もしないでもない・・・
ママの体調のこともあるし、会は早めにお開きになる。
外に出て、安室さんがタクシーを呼び止め、まずママとマスターを乗せて見送ると、続いてもう一台を止める。
「一台でいいですよね?梓さん、かおりさん、僕の順でいいかな」
「はーい!」
奥から安室さん、わたし、梓さんの順に乗り込み、まずは梓さんの自宅マンションへ向かう。
梓さんはそんなに飲んでないはずなのに・・・
たった二杯の甘いカクテルでかなりテンションが高くなっていて、先程から大声で喋り続けている。
「かおりさーん?わたし、先に降りますけど、安室さんには気を付けてくださいね!だって安室さんはかおりさんが大好きなんですからー!」
「あはは・・・大丈夫です」
陽気な酔っ払い梓さんをマンションの前で降ろして、窮屈な真ん中から左の席へ移る。
次はわたしの所だから。
「次は二丁目に」
「いえ。次はまだ決まってないのでしばらく大通りに出て北に走ってください」
「えっ安室さん?」
「かおりさん、全然飲み足りてないんじゃないですか?みんなに合わせてゆっくり飲んでるように見えましたから」
「・・・ほんとよく見てますよね」
「ワインにしますか?それともまだビールが飲みたいですか?」
二人で飲み直すことになる。
まだ時間も早いし、飲み足りてなかったのは本当なのでこのお誘いは普通に嬉しい。