第15章 雪の中の
「ただいまー!」
「おかえりなさい。早かったですね」
「こんな天気だし、少し早閉めです。でも今日はビッグニュースがありますよ!」
「おや、何ですか?」
「後でゆっくり教えてあげますから」
変装を解いた秀一さんと、夕食を食べる。
「で、何があったんだ?」
「・・・今日ね、真純ちゃんが来ました」
「本当か。元気だったか?」
「妹さんすごいパワフルでしたよー!元気そうです」
秀一さんの表情が穏やかになる。このときの彼の顔もすごく好きだ。
今日聞いた真純ちゃんの恋愛観を、そのまま秀一さんに話した。
「お兄ちゃん愛されてますねー」
「ああ、真純は・・・そうだな」
はにかむという表現が一番合うだろうか。微笑む秀一さんが、可愛くて。ニヤニヤしながら暫く見つめてしまった。
「でもね、今度わたしに探偵として相談したいことがあるって言われて」
「何をだ?」
「さあ・・・また近いうちエラリーか事務所に来ると思う」
「あいつは俺を探してるのかもしれんな・・・」
「っえ!・・・それ辛いなぁ・・・」
「すまんが話を聞いてやってくれ」
「もちろんです」
もし真純ちゃんに“赤井秀一を探してくれ”と頼まれたら、本当に辛い。
消息不明、おそらく死亡しているとしか伝えられないんだから。
秀一さんに聞いても、そう伝えるべきだと言われるだろう。口には出さないけど・・・
わたしだって安室透に宗介さんの事を“最悪の場合も考えて”と言われたときは・・・
「そんな顔をするな・・・組織を潰せば終わる話だ」
「それまでの辛抱ですね・・・」
秀一さんの方が辛いはずなのに、その彼に慰めてもらってるんでは・・・情けない。
その後は努めて明るく振る舞った。
大方秀一さんは気付いていたと思うけど・・・気付かないフリをしてくれるから助かる。
普段の彼は俗に言う俺様タイプだ。傲慢で強引なところもあるくらいなのに、こういうときはビックリするくらい優しくて。
ほんと、わたしはどちらの秀一さんにも頭が下がりっぱなしだ。