第15章 雪の中の
騒ぐ二人と対照的に、何か考え事でもしてるのか、上の空の表情の真純ちゃんにまた話しかけてみる。
「世良ちゃん、考え事?」
「まあね。なあかおりさん、今度相談に乗ってくれよ。探偵として」
「うん、いいけど?」
「いつもここにいるのか?」
「ここにいなければ、平日は上にいるよ。ここの二階がわたしの働いてる事務所なの」
「分かった。ちょっと用事を思い出したから悪いけど先に帰るよ。またな!」
真純ちゃんは足早に帰っていく。
・・・相談って、何だろうか。
「若い女性の声がすると思ったら・・・あなた達でしたか。いらっしゃいませ。珍しいですね。いつもはポアロなのに」
奥から安室透が出てきて、蘭ちゃんと園子ちゃんに話しかけた。
「安室さん、こんにちはー!今日はかおりさんに会いたくてこっちに」
「僕じゃないんですか?それは残念です」
「わたしは安室さんにも会いたかったですよー!」
「僕も、園子さんに会えて嬉しいです」
気持ち悪いくらい素敵な笑顔を纏った安室透と、目がハートになってる園子ちゃん。
わたしは蘭ちゃんと目を合わせて苦笑いだ。
そのうち“夜ごはんの支度が・・・”と蘭ちゃんが言い出し、彼女達も帰り。
また店内が静かになる。
「よく寝れました?」
「ええ、おかけさまで。ところで、もう一人お客さんがいたようですがどなたがいらしてたんです?」
「あの子達の友達の世良ちゃんて子が」
「・・・世良真純さんですか」
「世良ちゃんがどうかした?」
「いえ・・・何でもないです。もう今日は閉店にしましょうか」
零は、きっと秀一さんと真純ちゃんが兄妹なのを知っているんだろう。
だって意識してるのか無意識なのか、普段の安室透がしない顔付きになってた。
秀一さんのことを話すときの降谷零の顔と同じだった。
エラリーを閉め、また雪を踏みながら家へ帰った。