第15章 雪の中の
たっぷり睡眠をとって、朝になり。
起きてカーテンを開けると、外は一面真っ白だった。東京で見る、初めての雪。
支度をして、昴さんの姿をした秀一さんの作った朝食を頂き、今日はエラリーに出勤だ。
玄関まで見送られて、キスをして。
ドアを開けるとやはり外は真っ白。
まだチラチラと雪は降り続いているので上着のフードを被る。
「かおりさんが、華のように見えますね」
「・・・?咲く花ですか?」
「雪の中で可憐に咲いている小さな華です。可愛らしいってことですよ。それより足元気を付けて歩いてくださいね。あなたはたまにそそっかしいですから・・・」
「わたしの地元どこだか忘れましたか?心配いりませんよ。行ってきます!」
雪の上を歩きながらエラリーへ向かう。
わたしは東京に来るまで、雪が当たり前の地域に住んでいた。そこでは、こんな程度の雪を積もったとは言わないけど・・・
都内の交通網は早朝から大パニックのようだ。
職場が徒歩圏内で本当に良かった。
エラリーには、既に零がいるようだった。
というより、いる。金髪の色黒が雪の中店内から飛び出してきた。
「おはようございます!安室さん!雪で・・・」
「かおりさん何してるんですか!もう!」
安室さんになっている零に開口一番大声を出されて、フードと肩に付いた雪をパタパタと払われる。
「傘持ってないんですか?」
「持ってますよ?」
「わざと差してなかったんですか?」
「これくらいなら濡れませんよ」
「たしかに・・・濡れてないようですけど」
文化の違いなのか。雪国では乾いた雪の日は傘を差さない人が多いけど、それ以外の地域では雪は雨と同様、降ってきたら常に傘を差すそうで。
零はわたしが雪に降られながら歩いてきたのに驚いたそうだ。
エラリーに入って上着を脱ぎ、エプロンを付けてカウンターの中に入る。
「安室さんは車、大丈夫だったんですか?」
「いえ、今日は歩いて来ました。車だったらまだ着いてなかったでしょうね・・・」
「ですよねー・・・」
「これ・・・どうぞ。かおりさん、きっと寒い思いをして歩いてくるんだろうなと思って・・・用意してたんです」
「げ・・・」
温かそうな飲み物を出されて・・・彼を睨みつける。