第13章 諜報戦の行方
工藤邸の前に着くと、すぐに昴さんが玄関から出てきて、車のすぐ横までやって来た。
そう言えば昴さんと零って・・・会わせても大丈夫なのか?
一瞬ヒヤッとしたけど、予想に反して二人は普通に挨拶を交わし、話し出す。
「わざわざ送ってくださって、どうもありがとうございました」
「いえ。かおりさんにはしばらく辛い思いをさせてしまいました。本当にすみませんでした」
「先日の波土のことは残念でしたね」とか、「かおりさんが我儘言って迷惑をかけませんでしたか」とか・・・
違和感はあるけど二人の間には和やかな空気が流れているように見えて・・・にわかに信じがたい。
車から降りて、ぽかんと二人のやり取りを眺めていた。
「それにしても今日は冷えますね。かおりさん、そろそろ中に入りましょうか」
「あ・・・はい」
「僕も行きます。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
零が帰り、手を引かれて家に入るとやっぱり盗聴器の確認から・・・
相変わらず何も出てこないが。
昴さんが自身の喉元のスイッチを触った。
「おかえり、かおり」
「・・・!秀一さん・・・ただいま・・・っ!」
やっと聞けた秀一さんの声。
飼い犬が大好きな主人に飛びつくように、秀一さんに抱きついた。
よしよしと頭を撫でてもらい・・・嬉しくて仕方ない。
ついさっきは別の男の腕の中にいたクセに。
何事も無かったように、すぐに秀一さんに尻尾を振って飛びつくわたしは、やっぱり最低だ・・・
変装を解いた秀一さんがコーヒーをいれると言うのでリビングへ移る。
(ちなみにわたしも秀一さんも、夜にカフェインを摂ることは厭わない)
口にする直前、変なモノ入ってないよね?と、一瞬昨夜のことが思い出されたけど・・・平常心を保って一口口に含んで、飲み込んだ。
やっぱり、わたしにはハーブティーよりコーヒーの方が合ってる。
「どうだった?公安のセーフハウスは」
「ほんと、普通のマンションでしたよ」
「だろうな。公安の人間には会ったか」
「会ったのは風見裕也と降谷零だけです。公安の中も完全に信用出来る人ばかりではないそうで。今回のことも多くの人には知らせていないそうです」
「成程・・・俺のことは聞かれなかったか?」
「・・・何もなかった、と思う」