第13章 諜報戦の行方
帰る風見さんを玄関まで見送り、零と二人になった室内。
玄関で立ったまま抱きしめられて、今回のことを謝られる。
「僕のせいで・・・かおりさんに怖い思いをさせてしまって・・・本当に悪かった・・・」
「もう怖くないから。零のおかげだよ。ありがとう」
「それでもまだ僕と関わろうと思えるか?」
「また何かあっても零が守ってくれるんでしょ?」
「ああ。それは約束する。絶対だ」
腕の力が強くなり、キツくキツく抱き締められる。
何も喋ることもなく、数十秒。
腕から解放されて、リビングの方へ歩いていく零がこちらを向かずに言う。
「かおりさん・・・やっぱり、今日は家に帰りなよ。送るから」
「・・・へ?」
「昴さんも心配してるだろ・・・」
「それは、そうだろうけど」
「これ以上長く一緒にいたら・・・良くない」
「・・・零がそう言うなら」
“良くない”ってどういうことなのか。
たしかに家に帰りたい気持ちもあるけど、今日はもう一晩零と過ごすつもりでいた。
でも、家主が帰れと言うなら、帰るしかない。
荷物をまとめ始める。
風見さんがいて片付けられなかった洗濯物を取り込み、自分の昨日着ていた服と下着を畳む。
「それ、置いてったら?」
「え・・・?」
「服。また来るかもしれないだろ」
「・・・そうだね」
また来ることもあるんだろうか。
それは今回みたいな状況じゃなく、普通に泊まりに来るんだろうか。
「そうだ・・・ママの、エラリーのママの退院の日が決まったから。帰ってきたら退院祝いに皆で食事しようって。かおりさんの歓迎会もできてないしそれも兼ねてさ。行くだろ?」
「うん。行く!」
「よかった。伝えておくよ。準備できたら教えて?」
「わかった」
秀一さんに“今から帰ります”とメッセージを入れ、一日分の下着と洋服を置いて、零の家を出る。
地下の駐車場に降りると、「待ってて」と言われ。しばらくすると、いつもの車に乗って零が戻ってきた。駐車場は別の所に借りてるんだと。
助手席に乗り込み、車が出される。
尾行がついていないか、遠回りして確認しながら工藤邸へ。