第13章 諜報戦の行方
零のポアロのシフトはとっくに終わっているはずだけど、連絡も無しに帰ってこないってことは、ベルモットと接触してるんだろう・・・
夕食を作ったはいいけど食欲がわかなくて。
「零が帰ってくるまで待つ」と言い訳をして、まだ食べないことにする。
風見さんには食べるよう促したけど、彼もまた「降谷さんを待ちます」と手を付けなかった。
待つこと一時間。
監視カメラの映像に零らしき人物が映り、風見さんのスマホに零から着信が入る。
零と話す風見さんのホッとした顔付きからして、事は予定通り運んだんだろうと思われる。
エレベーターに乗り込んだ零の顔も、少し笑っているように見える。
しかしその表情が急に強ばり、怒っているように見え、風見さんは狼狽えたような顔と声になる。
「今葵さんと一緒に降谷さんの部屋におります・・・申し訳ありません!・・・勿論です、はい!」
なんとなく零の怒りの原因の予想はつくけど・・・
ガチャガチャと部屋の鍵を開ける音がして零が帰ってきて。
またすぐに全ての鍵を閉めてリビングに入って来た零の顔は・・・やはり恐い。
「なぜ風見がここにいる」
「わたしが呼んだの」
「僕の許可無くかおりさんに近付くな」
「申し訳ありません!」
「わたしが風見さんに無理矢理頼んで来てもらったの」
「断れただろ」
「すみませんでした・・・」
零は一方的に風見さんを責める。そんなに怒らなくてもいいのに。見ているこっちが辛くなる程だ。
この場を収めるには・・・わたしが謝るのが一番早いか。
「だって・・・一人になったらすごく不安で怖くなってきて・・・ごめんなさい、零・・・」
「かおりさんは謝らなくていいから・・・もう・・・」
「そんな顔するなよ・・・」と零が優しく頭を撫でてくる。もうあと一押しか。
零に身体を寄せて泣きそうな顔で(泣かないけど)彼を見上げる。
「零がちゃんと帰ってきてくれて本当に良かった・・・」
「ただいま・・・一人にさせてごめんな・・・」
「もう終わったんでしょ?いいよ。あのね、夜ごはん、零と食べたくて待ってたんだよ」
「・・・かおりさんが作ってくれたのか?」
「そうだよー!今準備するね」
・・・とりあえず零の怒りを鎮めることには成功したと思われる。