第1章 米花町2丁目21番地
寝る前ではあるけれど、人前に出るんだし、下着を上下身に着ける。膝丈のワンピースタイプのルームウェアを頭からストンと被って沖矢さんの部屋を訪ねた。
部屋に入ると、沖矢さんは既にグラスを片手にソファに座っていた。
その隣に浅く腰掛ける。正直、身体が硬い。
「緊張されてますか?」
「そりゃあ・・・今日一日ドキドキしっぱなしでしたよ。沖矢さんのせいです」
「僕のせいですか?でもそんなに強ばっていられるのも申し訳ないのでもう少しラクにしてください」
沖矢さんが作ってくれたお酒を受け取る。氷が、カラン、と音を立てた。
グラスを口に近付けると漂う甘い香り。少しずつ口に含むと、とろんと液体が広がって、鼻からまた甘い香りが抜けていく。
高濃度のアルコールに、脳が少しずつふわふわとしてくる。
「夕食のときも思いましたが、かおりさんは、お酒も幸せそうに飲みますね」
「美味しいものを頂くときは本当に幸せですもん」
照度を落とした天井の照明に、間接照明の柔らかい明かりで、とっても落ち着く雰囲気。
気付けば緊張も解れていて。沖矢さんとお酒を楽しんだ。
でも、だんだん空気は甘く、変わっていく。
「ようやく二人だけの時間ですね」
「はい。なんかずっと慌ただしかったですもんね」
「かおりさん・・・」
急に身体を抱き寄せられて、彼の腕の中。
「僕は今日ずっとあなたに触れたくてたまりませんでした・・・嫌なら、今言ってください。僕は、あなたを抱きたい・・・」
嫌じゃない。という思いを込めて、彼を見上げる・・・
身体が開放されたと思えば、唇が重なる。
離れてはまた重なり、次第にそれは湿ったキスに変わり。
舌が侵入してくる・・・柔らかくて、熱い。
蕩けそうになりながら、彼の動きに夢中で応える。
沖矢さんのキスは、すっごく上手で。こんな風にされたらもう・・・嫌な訳がない。
腰のあたりを強く抱かれて、反対の手では背中や髪を撫でられて・・・
唇が離れ、視線が合う。
キスだけですっかり息は上がってしまって、身体も熱い。
「はぁ・・・っ・・・沖矢さん・・・」
「とても嫌がってるようには見えませんね」
クスりと、笑われる。