第12章 白妙の策略
今日はとにかく早く家に帰りたい一心で、仕事を片っ端から片付けていった。
そして。せっかく登庁してきたのだ。
最後にとある部署に寄り、いいモノを色々調達して警察庁を出た。
スーパーに寄り、食材を買い込み自宅へ帰る。
早くかおりさんの顔が見たい。
逸る気持ちを抑えて、自分の部屋に入る前に、まずは隣の風見の所へ。
僕の部屋の中に監視カメラは無いが、マンションの出入口、廊下、ベランダにはカメラを取り付けてあり、風見にはそれを見張らせていた。
何も変わりが無かったことを確認し、風見も夕食に誘う。多忙を理由に、ロクなもの食べてなさそうだから。たまにはまともな食事を摂らせようと思って。
少し後で来るように伝えて、やっとかおりさんのいる自室へ。
鍵を開け、扉を引くとすぐに、奥からかおりさんが出てくる気配がする。
僕じゃなかったらどうするんだよ、もう少し警戒しろよな、と思いつつも、部屋で彼女が待っていた事実が嬉しくて、中に入り鍵を閉め、荷物を置くなりかおりさんを抱き締める。
「ただいま」
「おかえりなさーい」
頭にキスをすれば、こちらを見上げてくるので唇も頂く。
小さくて、柔らかくて・・・食べてしまいたい唇。
赤井の情報を手に入れる為に近付いたつもりだったのに。
赤井の女だと思ったから、奴から引き剥がして滅茶苦茶にしてやろうか、とも考えたくらいなのに。
いつの間にかかおりさんは僕の心に入り込んでくる程の存在になっていて。
僕にはそもそも家族もいないし、今まではヒロが家族に一番近い存在だったけど・・・そのヒロももういない。
かおりさんは・・・僕の恋人ではないけれど、僕が今一番大事にしたい人だ。
これ以上大切な人を失いたくない。
世間一般的には、こういう感情のことを、“愛”と言うんだろう。
僕では幸せにしてあげられないのが分かってるから、この気持ちは打ち明けるつもりはないけれど。
やっぱりたまには、こうやって一緒に過ごしたい。
都合のいい関係だと思われても仕方ない・・・