第12章 白妙の策略
突然零の家に一人きりになり、家主には悪いがいろいろ部屋の中を拝見させてもらう。
男性の一人暮らしにしてはかなり綺麗な部屋。
キッチンには調理器具も調味料類もバッチリ揃っていて。シンクの中までピカピカ。
寝室のベッドも綺麗に整えられていて。
もちろん綺麗な浴室には、今朝洗ったであろう服が、きちんと形を整えて干されている。
かなり忙しい生活を送ってるはずなのに、彼は家事までバッチリこなしているようだ。頭が下がるよ・・・
ここにお世話になる間は家事全般を引き受けて、少しでも零に休んでもらえるようにしよう。
昼過ぎに、秀一さんに電話をかけてみた。
工藤邸周辺の電波はベルモットに監視される恐れがあるので、会話の内容には気を付けるように、秀一さんからも零からも言われている。
「もしもし」
「昴さん?無事着きましたよー。一応連絡しておこうと思って」
「よかったです。お仕事頑張ってくださいね」
「はい!」
「そちらはどうですか?寒くないですか?」
「思ったより過ごしやすいです」
「そうですか。安心しました」
他愛のない、中身のあるようで無いような会話をしばらく続け、電話を切る。
・・・普通に喋りたい。昴さんじゃなくて、秀一さんと。
今更だけど、朝の間にもっと話してくれば良かった。
夕方頃、思い出したように浴室を覗いて、乾燥機のおかげですっかり乾いていた零の服を取り込み、畳んでクローゼットの前に置いておいた。
ふと、クローゼットの中を除くと、零が普段ポアロやエラリーに着てくる服はもちろんのこと、スーツもワイシャツも沢山掛かっていて。
スーツを一着取り出して、零の着てる所を想像して、戻してはまた別のを取り出して・・・それだけでしばらく楽しめた。
我ながら、わたしは変人だと思う。