第12章 白妙の策略
かおりさんを僕の自宅に連れてくることは、風見にしか伝えていない。
正直・・・公安の中だって信用できる人間ばかりではないのだ。
その点、風見は一番信頼が置ける部下だと断言出来る。
自宅を出て、風見を待機させている隣の部屋へ向かう。
(ちなみに自宅を含め、隣と上下の部屋も、僕名義で契約してある)
「降谷さん、本当にいいんですか?彼女を家に置いても・・・」
「僕がいいと言ってるんだから、いいんだ」
「室内の秘撮は無くて良いとしても秘聴くらいはした方がいいのでは?」
「監視したところでボロを出すような人じゃないよ、かおりさんは。僕がどれだけ探っても赤井の“あ”の字も出さないんだ」
「そうですか・・・」
「僕らのセックスを盗み聞きしたいなら話は別だが」
「そそ、そんな!滅相もない!!でも・・・降谷さんは、葵さんのことを・・・本当に信用されているんですね」
「・・・そうだな。でも風見のことも同じくらい信頼してるぞ?」
「あ、ありがとうございます!」
「もし何かあったらすぐに対応して欲しいが・・・最近働き詰めだろ?完全な休息とは言えないが、たまにはゆっくり身体を休めろ。それが今回の君の仕事だ」
「ありがとうございます、降谷さん」
「では、頼んだぞ、風見」
マンションを出て、久しぶりに警察庁へ。
片付けなければならない事務処理が山のように待っている・・・それは登庁する度ほぼ毎回の事だが。
現場仕事の方が、僕の性には合ってる。
ただじっと座って書類とパソコンというのは・・・勿論仕事だからキッチリやるけれども乗り気にはなれない。
でも今日は・・・夜をかおりさんと過ごせると思うと、気分はいつもとまた違う。
専用の部屋に入り、ひたすらデスクに向かって仕事を続けた。
しばらく没頭していると、風見から着信があり。
まさかかおりさんに何かあったのではと思い急いで出れば、“昼食の材料は冷蔵庫にあるものを使っていいのか?”の確認で。
笑ってしまった。
“何でも好きに使えばいい、ただ夕食は僕が作りたいから夜は何もせず待つように”と伝言を託して、また仕事を再開した。